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よもやま話 バックナンバー2/2

後期高齢者

後期高齢者問題とは何でしょう。

 一方では、日本の国家財政がひっ迫するなかでの「国民医療費の大幅な増加」があります。
 平成18年度推計での国民医療費はおよそ34兆円でした。
 そのうち高齢者の医療費は推定11兆円で、75歳以上の人の医療費が、全体のおよそ3分の1を占めています。「後期高齢者」層の一人当たり医療費は、現役世代のおよそ5倍かかっているそうです。

 当然の話ながら、健康保険や国民健康保険などそれぞれの保険制度のなかに、「後期高齢者」層が含まれていました。
 現役世代と「後期高齢者」との負担関係がわかりにくくなっていたため、国としては、膨張する医療費の抑制がやりにくい構造になっていました。

 高齢化社会が今後とも急ピッチで進む見通しに変わりがない以上、安定的で持続化が可能な医療保険制度をつくらない限り、現在のシステムの部分的な手直しだけでは早晩限界がくることは間違いないでしょう。

 このような背景を受けて、国の医療制度改革の柱のひとつとして、この「後期高齢者」だけを対象層として独立させ、医療給付を集中管理する」という、世界的にも類を見ない新制度が、スタートせざるを得なくなったわけです。

 負担増は「後期高齢者」にもおよびます。
 サラリーマンなど給与所得者の扶養家族扱いとなっていて、保険料負担はゼロであった75歳以上の「後期高齢者」は、この「後期高齢者医療制度」において、今後は自分で、新たに保険料を負担しなくてはならなくなりました。
 そして、ほとんどのケースでは、介護保険と同様に年金から天引きで保険料を徴収されることになるため、端的に「年金の手取り額が減る」ということになります。
 ちなみに、「後期高齢者医療制度」には約1300万人が加入していますが、そのうち「これまでの制度では被扶養者扱いで支払義務がなかったところ、「今後あらたに保険料負担が発生する」人は、およそ3分の2にあたる200万人に達します。

 後期高齢者に年金から保険料を負担させ、病院にできるだけ行かないようにという施策でしょう。

 また、「後期高齢者」以外にも、企業で働く人たちが加入する健康保険組合も、多くの拠出を求められるようになり、その結果、保険料の引上げを決めた組合も相次いでいます。
 加入者の平均年齢が若い組合ほど大きな負担になる仕組みで、いわば、しわ寄せが「若い現役世代」にもきています。

 国民健康保険加入者も、私の場合(西宮市在住)の例を挙げると、昨年まで年間62万円だった国民健康保険が年間68万円にアップしています。
 内訳を見ると、医療47万円+後期高齢者支援12万円+介護保険9万円となっています。

 「後期高齢者」には「病院に行かないようにしなさい」、若い世代には「親が病院に行くから医療費がかさむ」「親の治療を少なく、場合によっては、延命策をとらずに死なせなさい」といっていることになります。

 国の財政も、ここまで追いつめられたのかという気がします。

 後期高齢者は、戦中の戦いを生き残り、戦後の食糧難を耐抜き、歯を食いしばって戦後の高度経済成長を支え、日本を世界で最も裕福な国の一つにした人たちです。
 その人たちに「早く死ね」といわんばかりの施策は「思いやり」がありません。

 また、親の介護をする世代の人たちにも、親の治療を最小限度に、場合によっては「延命策をとらずに死なせなさい」といっているわけすから、ひどいものです。

 財政が逼迫しているのは間違いないでしょう。
 しかし、高齢者も、健康に長生きしたい、そのためには病院で診察治療を受けたい、子としては、例え意識が不確かであろうが、一刻一秒でも長生きしてほしいと考えるのが子として当たり前のことです。
 親が世話になった人たちに、お見舞いに来てもらうためにも長生きしてもらわなければ困ります。

 ここで問題なのは「縁もゆかりもない高齢者」です。
 全くのエゴですが、一般に「無駄な」医療費はかけてほしくはないでしょうね。
 といっても、みんなが自分の親の延命を望めば結果は同じです。例外は、身よりのない人だけです。身よりのない人はまれでしょう。

 私個人の意見としては、医療費負担なんて気にすることはなく、必要なものは必要だから、どんどん支出すべきであり、「後期高齢者」が諸悪の元凶であるかのような分類をすることは愚かであるということです。
 「過っては則ち改むるに憚ることなかれ」(論語)ということばをかみしめるべきでしょう。

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