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よもやま話 バックナンバー2/2

「雑」とは

生物学者でもあられた昭和天皇陛下は、草花の名をお尋ねになったところ、「これは雑草でございます」との回答があったので、「雑草という草はない。それぞれに名前がある」とおっしゃられたというエピソードがあります。

 もっとも、昭和天皇陛下が、ヨーロッパ行幸されたときに、随行者に「何という名の木か」「何という名の草か」と聞かれたとき、随行者が、すべて「西洋○○でございます」と答えると満足げな様子であったとのエピソードもあります。動物系は強くても、植物系は苦手だったのかも知れません。

 ところで、裁判における事件の特定は、裁判所名(+支部名)+年号(元号表示)+事件の種類をあらわす記号+番号 以上により特定されます。
 次に、具体的に「損害賠償請求事件」「貸金返還請求事件」「不当利得返還請求事件」「破産申立事件」などがつきます。
 他は比較的わかりやすいでしょうが、事件の種類をあらわす記号は、一般の方にはわかりにくいと思います。
 地方裁判所の第一審の民事訴訟事件なら「(ワ)」、破産事件なら「(フ)」、任意競売事件なら「(ケ)」という記号です。
 簡易裁判所の第一審の民事訴訟事件なら「(ハ)」、高等裁判所の控訴審の民事訴訟事件なら「(ネ)」などがつきます。
 民事の場合は、基本的に「カタカナ」の記号がつきます。民事事件に準じる行政事件も、地方裁判所の第一審の民事訴訟事件なら「(行ウ)」などカタカナの番号がつきます。

 家事事件も、家庭裁判所の調停事件なら「(家イ)」、審判事件なら「(家)」など、やはり「カタカナ」の記号がつきます。

 これに対して、地方裁判所の第一審の刑事事件なら「(わ)」など、「ひらがな」の記号がつきます。

 ということですが、どの典型的な事件にも分類しにくい事件は必ずあります。
 そこで「雑事件」という分類をし、地方裁判所の民事事件なら「(モ)」、地方裁判所の刑事事件なら「(も)」という記号を付します。
 個人の破産事件にともなう免責申立事件には「(モ)」という記号がついていましたが、破産法の改正により、自然人の免責申立ては自己破産申立に当然含まれることになり、「(モ)」はつかず、その結果、「(モ)」はかなり減ってきていますが、司法統計などを見ると、それでも相当数あります。
記号制定時の昔は、個人の破産事件にともなう免責申立事件は少なかったのかもしれません。多ければ「(モ)」という「雑事件」扱いではなく、独立した記号がついていたでしょう。

話は変わって、ちゃんとした組織であれば、必ず部署があり、管轄事務が定められています。
 組織によって異なるのですが、通常の仕事は、通常の「部」「課」「係」が担当しますが、本当の「雑」事務は、「総務部」「総務課」「庶務係」の担当ですね。
 ただ、「総務部」「総務課」「庶務係」も、仕事の内容が明記されているのが通常で、「その他、他の部署が扱わない仕事」という規定になっていないことが多いようです。
 その場合は、「総務部」「総務課」「庶務係」の担当でもない想定外の仕事は、建前上は、組織の長自らが行わなければなりません。もちろん、職務命令を出して、誰かにやらせることになるでしょうが・・

 ちなみに、私のホームページも「『雑』記帳」が、やたら増殖してきました。
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