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2013年バックナンバー

近隣窮乏化政策

近隣窮乏化政策(beggar‐my‐neighbour policy)という言葉があります。

 「他国の犠牲のもとに自国の景気を回復しようとする政策」のことです。
 ある国が、輸入制限・輸出拡大という施策をとると、他国にとっては輸入拡大・輸出の減少ということを意味します。
 他国の生産縮小、所得減少という犠牲を伴うので「失業の輸出」などともいわれます。


 輸入制限・輸出拡大の施策はいろいろあります。

 輸入制限・輸出拡大の施策はの一つには、関税・非関税による輸入制限、輸出補助金などによる輸出促進などの政策があります。
 これは、大恐慌後に、各国が輸出促進、輸入制限策をとったため、貿易が縮小し、結果として、第二次世界大戦の引金をひいたといわれています。

 現在、WTO(世界貿易機関)が、輸入障壁の撤廃や、輸出補助金の支出をさせないという役割補果たしています。
 もとより「聖域なき関税撤廃」などはあるはずもなく、各国の「生命線」はゆずってはいません。

 WTO(World Trade Organization。GATTは発展解消)のを基本原則は以下のとおりです。物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権やサービスも含まれます。
1 自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)
2 無差別(最恵国待遇、内国民待遇)
3 多角的通商体制

 WTOの加盟国、加盟申請中、オブザーバー、いずれでもない国は、エリトリア、ソマリア、北朝鮮、東ティモール、モナコ、サンマリノ、トルクメニスタン、キリバス、ツバル、パラオ、マーシャル、ミクロネシア、コソボ、クック諸島、南スーダンとなっています。
 実質的には、ほぼすべての国が、WTOの加盟国、加盟申請中、オブザーバーです。

 「WTOに提訴した」という報道がありますね。
 「WTO協定違反の措置による利益の侵害を回復するためには、WTO協定に基づく紛争解決手続を利用しなければならない」と定められ、勝手に制裁措置は発動できません。


 輸入制限・輸出拡大の施策のもう一つは、自国通貨の為替レートの切下げによる輸入制限、輸出促進です。

 各国の政府あるいは中央銀行が、自国通貨売り、外国通貨買いをすれば、自国通貨の為替レートを下げられます。

 アメリカなど各国が、中国の人民元切上げ求めるというのは「聞飽きた」ニュースです。
 韓国は、為替介入をしょっちゅうしていますが、韓国の経済規模、ウォンの世界での通用力を考えて、いちいち非難などはされていません。
 スイスが、1.2スイスフラン=1ユーロに固定するため、無制限の介入をしています(最近は介入の必要がなくなってはいます)が、非難はありますが、「仕方がないか」と思われています。

 米ドル、ユーロ、日本円は、自国通貨売り、外国通貨買いの為替介入をさせてもらえませんね。

 政権交代により「無制限の金融緩和」「2%の物価上昇率目標」がかかげられたため、急激な円安・外貨高が続いています。

 デフレ脱却のための手段により、結果的に、円安・外貨高となったのか、円安・外貨高にするために「無制限の金融緩和」政策を打ちだしたのかという問題になります。
 後者なら「不当な為替操作」「近隣窮乏化政策」ということになります。

 主要7ヶ国(G7)財務相らは、平成25年2月12日、以下の声明を出しました。
 「我々、G7の財務大臣・中央銀行総裁は、我々が長年にわたりコミットしている、為替レートは市場において決定されるべきこと、そして為替市場における行動に関して緊密に協議すべきことを再確認する」「我々は、我々の財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する」「我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している。我々は引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、適切に協力する」

 一体、どっちなんでしょうね。
 どちらともとれます。

 アメリカは、「無制限の金融緩和」策をとろうとしていますから、円安は問題にできないでしょう。
 ドイツフランスなどのヨーロッパ諸国ですが、PIGGSの経済危機で、ユーロは、本来あるべき為替レートから安くなっているはずだと思うのですが、いかがでしょう。

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