2013年バックナンバー
トルコの海峡トンネル
安倍首相は、平成25年10月28日夜(現地時間)、海底トンネル開通を祝うレセプションに出席し、「『飛んでイスタンブール』にやってきた。海峡の横断鉄道が友情のシンボルとなり、協力関係が発展することを期待する」とあいさつしたそうです。
若い方は「飛んでイスタンブール」を知らないかも知れません。
庄野真代のかつてのヒット曲です。
庄野真代は「飛んでイスタンブール」がヒットするまで、トルコに行ったことがなかったそうで、平尾昌晃も畑中葉子も「カナダからの手紙」がヒットするまで、カナダに行ったことがなかったのと同じですね。
ボスポラス海峡の海底トンネルは、大成建設が手掛け、日本政府が円借款を供与しています。
総工費30億ユーロ(約4200億円)です。全額日本からの借款というものではありません。
ボスポラス海峡は海流が早く、トンネル建設は難工事です。
トンネルは全長13.6キロ(関門トンネルは3.5キロ)、一部は、11の箱形の構造物を海底に沈めてつなぐ沈埋工法を採用しています。
簡単にいえば、海底に穴を掘り、コンクリートの11本の土管を敷いて、その土管の中を列車が走るという仕組みです。
海底トンネル建設の過程では、遺跡など4万点あまりが発掘され、イスタンブールが8500年前にさかのぼる歴史を持つことも分かりまし。、発掘調査のためにプロジェクトの完成は4年ずれ込みました(当初計画は5年)。
イスタンブール市街地は、海峡の西側(ヨーロッパ部分)で歴史的に発展していましたが、近年は東側(アジア部分)の住宅街の開発も進み、両岸の人の往来が増加しています。
フェリーの他、海峡に2本の大型のつり橋がりますが、1日40万台強の車両が行き来し、激しい交通渋滞に悩まされているようです。
トンネル開通により、1日あたり、延べ150万人を運べれば、渋滞緩和につながりますね。
イスタンブールは、2020年のオリンピック開催を争った都市です。
平成25年6月の国際オリンピック委員会(IOC)の評価報告書では、交通渋滞はイスタンブールの課題として指摘されていました。
東側(ヨーロッパ)側の選手村から、直線距離で20キロ以上離れた西側(アジア)競技場までの移動時間を「35分以内」とする計画が「あまりに楽観的」と指摘されていましたが、トンネルの開通で、可能となりました。
もっとも、最終的に、オリンピックの開催はできませんでしたが・・・
日本は、大成建設が建築し、日本政府が円借款を供与していましたから、「敵に塩を送る」ようなものですが、日本とトルコの友好関係は、半端なものではありません。
安倍首相が、平成20年5月にトルコを訪れた際、エルドアン首相に対し「イスタンブールが5つの輪を射止めたら、私は誰より先に『イスタンブール万歳』と言いたい。東京が射止めたら、誰よりも早く『万歳』と叫んでほしい」と提案していました。
三菱重工業を含む企業連合は、平成25年10月29日、トルコが黒海沿岸の都市シノップで計画している原子力発電所の建設を受注することでトルコ政府と正式に合意しました。
他の国も、トルコに原子力発電のセールスを行っていましたが、トルコが、日本と同じ地震国であることを考えれば、ベストな選択だったと思います。