2013年バックナンバー
営業保証金
その昔は、バブル時期に購入した株や不動産の大きな損失をうめるため、預り金を横領したというのが多かったようですが、最近報道される預り金の横領は「事務所経営の資金繰り」ができないということが多いようです。
弁護士の預り金の横領は、いまや「老若男女」を問いません。
なお、弁護士は、各自、独立した自営業者です。
弁護士会は、弁護士の集合した法人にすぎませんから、各弁護士の「ふところ具合」を見ることはできません。
横領などの不祥事が生じてから、事後的に、懲戒処分ができるにすぎません。
いい方法はないでしょうか。
宅地建物取引業者が営業を開始するには、営業保証金というものを供託所に供託しなければなりません。
宅地建物の取引に関し、宅地建物取引業者の信用を担保し、万一事故が生じた場合にそこから損害賠償等の支払いを受けられるように保証金を供託しておくシステムです。
新規に開業する宅地建物取引業者は、本店(主たる事務所)の最寄りの法務局に、宅建業免許取得の日から3か月以内に保証金を供託しなければなりません。
供託金額は、本店(主たる事務所)1000万円、支店(その他の事務所)1か所につき500万円です。
現金でなくても、国債、地方債の有価証券などで代替もできます。
供託したのちに、免許権者(都道府県知事または国土交通大臣)に届出を済ませてはじめて、宅建業者は営業を開始することができるという仕組みです。
弁護士も、宅地建物取引業者と同じように、営業保証金を供託するという制度をとればよいと思います。
金額は、仮に、宅地建物取引業者と同じく1000万円としましょう。
そして、弁護士登録番号の他に、弁護士供託番号を割り振り、日本弁護士連合会が、官報とインターネットで公告します。
ただ、弁護士登録時に1000万円をもっているということは通常考えられません。
あるいは、いくら経験があっても1000万円を供託できるとは限りません。
1000万円を供託している弁護士は、単独で事件を受任することができますが、1000万円を供託していない弁護士は、1000万円を供託している弁護士との共同受任でなければ、仕事ができないという制度をもうければ解決できます。
委任状、弁護士選任届については、弁護士供託番号の記載を義務づけます。
また、裁判所は、弁護士に破産管財人や成年後見人や相続財産管理人を命じる場合、1000万円を供託している弁護士、あるいは、1000万円を供託している弁護士と複数に職務を命じなければならないこととします。国選弁護人だけは例外としましょう。
そして、トラブルがあれば、被害者は1000万円の限度で(被害額に応じて按分)、被害を回収できることとします。なお、弁護士は、責任賠償保険に加入していることが多いですが、横領などの故意犯には、保険金がおりないことはいうまでもありません。
間違いなく、弁護士の預り金の横領は減少します。
まず、供託している弁護士には、廃業をすれば最低1000万円の保障があります。
最低それだけの余裕がある弁護士しか単独で仕事ができないわけですから、弁護士の預り金の横領は減ります。
1000万円を供託していない弁護士との共同受任をする弁護士も、自分にも責任がかかるわけですから、厳重なチェックを期待できます。もちろん、それだけの危険を負担するわけですから、取り分は多くなるでしょう。
1000万円を供託している弁護士との共同受任ができないほど信用のない弁護士は、仕事そのものができなくなります。
間違いなく、弁護士の預り金の横領は減少します。
弁護士の資産・借財情報などのプライバシーは一切おかしません。
いかがでしょうか。
不動産取引業者にできて、弁護士にできない理由はないと思います。
問題は営業保証金の金額で、あまりに高額(たとえば2億円)にすると、仕事ができない弁護士が増えてしまいます。
安価にしすぎると制度の意味がありません。
1000万円から2000万円くらいでどうでしょう。