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2013年バックナンバー

ドイツの国防

ドイツは、敗戦後、東西ドイツに分割されるとともに、武力を持つことを禁じられていました。
 日本も、敗戦後、武力を持つことを禁じられていましたが、幸いに、分割されることはありませんでした。
 ドイツは、平成2年10月3日に、旧西ドイツが旧東ドイツを吸収するという形で統一されましたが、現在まで、旧西ドイツからおびただしい金額の「援助」が続いているにもかかわらず、20年以上たった今も、旧東ドイツの経済(失業率等)、治安は悪いままです。

 ドイツ(以下、西ドイツは「ドイツ」)も、日本同様、冷戦下で国防軍を持つことになりました。
 昭和30年(1955年)11月のことです。
 まず、ドイツ連邦共和国憲法(基本法)を改正しました。
 87a条
  (1) Der Bund stellt Streitkraefte zur Verteidigung auf.
   連邦は、防衛のために軍隊を設置する。
  (2) Auser zur Verteidigung duerfen die Streitkraefte nur eingesetzt werden, soweit dieses Grundgesetz es ausdruecklich zulaest.
  軍隊は、防衛を除いては、この基本法が明文で認めている場合に限って出動することができる。

 日本なら、法律などの改正については、例えば「民法398条」のあとに条文を加える場合「398条の2」「398条の3」・・とします。
 ドイツは、「87条」のあとに条文を加える場合「87a」「87b」・・とします。
87条は「連邦の行政の対象」で国防軍とは無関係ですから、「87a」条「87b」条は、追加改正されたものです。

 昭和30年にNATOのメンバーとなり、昭和31年には18歳から45歳までの全男子国民に兵役義務が導入されました。今は廃止されています。

 ちなみに、ドイツは、ちゃんと、憲法(基本法)を改正しています。

 冷戦の間、ドイツ連邦軍は、NATOの中央ヨーロッパ防衛の主力となりました。
 陸軍は12個師団からなる3つの軍団で構成され、空軍は戦術戦闘機多数を所有し、NATOの統合防空軍の一部をなし、海軍はバルト海(Ost See。東海)の防衛を受け持ち、北海の増援軍や補給船の護衛をしていました。


 私が留学した1982年から1984年は冷戦まっただ中でした。
 東ドイツが、ソ連のSS20という中距離核ミサイルを配置し、ドイツは、これに対抗してパーシングⅡという弾道ミサイルを配置しました。
 マルクが、ミサイル配備のため、対ドル・対円でかなり安くなって「丸儲け」をしたという記憶があります。
 2年という期限付きでしたし、突然核戦争にでもならない限り、ボンからフランスまで逃げることは「距離的に」困難ではありません。当時の西ドイツの首都はボン、フランスの国境近くに位置し、東ドイツの首都ベルリンはポーランドの国境近くに位置しています。
 韓国と違い、国境線近くに首都をおくという「おろかな」ことはしません。
 北ベトナムのハノイ、南ベトナムのサイゴンも国境から離れていましたね。

 結局、幸いなことに、核戦争もなく、冷戦は終結しました。
 ドイツは、東ドイツを吸収し、統一ドイツが誕生しました。

 ちなみに、統一ドイツができるまで、ドイツは周辺国に「おとなしく」していましたが、統一の目的を達してしまうと、周辺国に「ものを言う」ようになりましたね。


 ドイツ連邦軍NATO軍の一員としてヨーロッパ防衛義務を負っています。
 連邦軍の任務は、基本法の87a条に規定されているとおり、活動が許されるのは「防衛」のみです。
 当然、NATO軍の一員ですから「集団的自衛権」を行使するのは当然ということになります。

 ただ、しかし平成2年(1990年)以降、国際情勢は、東西対立から全体的な不安定状態へと変化しました。
 平成3年(1991年)の湾岸戦争で、多国籍軍に資金面のみで参加し、人的参加しなかったことは国外から批判を浴びました。日本も同じです。

 平成6年(1994年)には、ドイツ連邦共和国憲法(基本法の)87a条の解釈について、連邦憲法裁判所は、ドイツ基本法の「防衛」とはドイツの国境を守るだけでなく、危機への対応や紛争防止など、世界中のどこであれ広い意味でのドイツの安全を守るために必要な行動を指すと解釈が拡大され、ドイツ連邦議会の事前承認によりNATO域外への派兵が認められました。

 ドイツ連邦軍は、NATOや欧州連合、国際連合の一員として、PKOなどの作戦を行うことが増えています。

 カンボジアのUNTAC、ボスニア・ヘルツェゴビナの欧州連合部隊、コソボのKFOR、アフガニスタンの国際治安支援部隊、エチオピア、エリトリア、ソマリア、スーダン、コンゴ民主共和国、レバノンなどの軍事作戦や平和維持活動に派兵しています。
 アフガニスタンでは後方支援のはずが、戦闘に巻込まれてしまいました。

 日本としても、国際社会で生き残っていくためには、また、自国を守ってもらうためには、集団的自衛権を明確にして、平和維持活動や軍事作戦に参加するという方向になるでしょう。
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