2013年バックナンバー
モラトリアム法の期限切れと住宅ローン
「中小企業金融円滑化法」いわゆる「モラトリアム法」が、平成25年3月31日にて期限が切れました。
中小企業への融資だけでなく、個人向け住宅ローンの返済猶予も対象となっていました。
「モラトリアム法」は、金融機関は個人の住宅ローンに対してもできる限り貸付条件の変更などの相談に応じることを命じていたのです。
景気悪化に伴う、賃金減少(残業の減少含む)、失業、病気などの理由で返済に窮する債務者に対して、元金返済はひとまず置いておいて、利息分だけを支払えばいいという返済猶予がとられていたようです。
もちろん、住宅ローンの元金は減りませんし、ローンの支払期間が延長されれば、その分利息が多額になるのは当然のことですね。
「2年間元金の返済は据え置いて金利だけを支払う」としていた場合、失業していたが新たなよい就職先がみつかった、病気をしていてが回復したという例なら問題ないのですが、そのような事例は、必ずしも多くはないでしょう。
35年ローンで、75歳や80歳まで、住宅ローンを組んでいたのでは、ローンの支払期間が延長は難しいですね。
また、景気が回復して、残業が増え、給料が増えたという事例もまれでしょう。
現実には、奥さんがパートに出る、あるいは、パートの勤務時間を増やすということで収入を増やしたり、教育費を削る(塾をやめさせる)という方法により、当初の約束の返済額に戻すということが精一杯ではないでしょうか。
弁護士は、住宅ローン特則付の個人民事再生という方法で、依頼者を助けることができます。
ただ、自ずから限界があります。
通常は、住宅ローンを約定どおり返済するため、カードのリボ払い、キャッシング、あるいはサラ金に手を出して「どうにもこうにも」いかなくなったというのが典型です。
住宅ローンの方が、キャッシング、あるいはサラ金より利息の低いのは当たり前の話で、住宅ローンのリスケジューリングの話が先ということに気づかない、あるいは、気付こうとしない人がいます。
この場合、住宅ローンさえ返済できるのなら、他の負債は、5分の1(最低100万円)、3年~5年の分割にできます。
もっとも「住宅ローンさえ返済できる」というのが前提で、75歳や80歳まで、住宅ローンを組んでいたのでは、そもそも期間の延長は難しいですし、家計収支表をつくってみて、毎月分の住宅ローン、ボーナス時の住宅ローン分の余剰が出ないようですと、個人民事再生の取下げをすすめられるか、却下決定が出ます。
裁判所のチェックは、かなりきびしいと考えていたほうがよいでしょう。
私自身は、住宅ローンの残高が、住宅の時価(売却価格)を上回っている場合、あまり、持家にこだわらず、さっさと破産して、借金全体を0にする方が「まし」な場合が多いと思っています。
もっとも、住宅ローンの滞納から保証会社の弁済までは3か月程度、その後、競売の申立までは1、2か月程度、競売申立をされて、明渡の執行がされるまで半年弱程度かかりますから、度胸さえあれば、腹をくくって、住宅ローンの返済を全くしないのも一方法です。
適当な時期で破産申立をすれば、破産管財人が、任意売却の手続きをするのに時間がかかり、もう少し「ただで」住み続けることができます。