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2014年バックナンバー

交通事故の損害賠償請求訴訟が全国の簡易裁判所で急増

交通事故の損害賠償請求訴訟が全国の簡易裁判所で急増し、平成25年の提訴件数は、平成15年(10年前)の5倍の1万5428件に上ったことが、最高裁判所の調査でわかりました。

 簡易裁判所の訴訟は、は140万円までしか審理できまんから、あまり弁護士は手を出していませんでした。


 任意保険に「弁護士特約」をつける契約が普及し、被害額の少ない物損事故でも弁護士を依頼して訴訟で争うケースが増えたことが原因です。

 弁護士特約は、平成12年、日本弁護士連合会と損害保険各社が協力して商品化しました。

 事故の当事者が示談や訴訟の対応を弁護士に依頼した場合、その費用が300万円程度までの範囲で保険金で支払われます。

 契約数は、平成24年度で約1978万件です。
 重大事故で保険加入者を保護する目的で導入された側面がありますが、被害が軽微な物損事故で使われているのが実態となっています。


 死亡事故など大きな損害賠償になれば、弁護士特約がなくても、弁護士は、わずかの着手金で訴訟を提起し、保険会社からえた賠償金から、成功報酬とともに、着手金残額を回収します。
 弁護士に委任することは容易です。

 問題は、訴訟提起がペイしない場合です。

 弁護士特約がないころは、訴訟を提起すると、弁護士費用を支払えば、わずかしか残らなかったり、逆に、マイナスになることがありました。

 300万円以下の訴訟の場合、着手金は8%+消費税、成功報酬は16%+消費税ですが、訴訟の着手金の最低額は10万円+消費税という別途の規程があります。
 また、印紙や切手の実費もかかります。

 物損のみで、20万円の訴訟を提起して、15万円を回収したとしましょう。
 着手金は10万8000円、成功報酬は2万4000円です。
 印紙が3000円、切手が4500円くらいです。

 ほとんど残りませんね。

 逆に、10万円しか回収できなければ赤字です。

 ですから、物損のみの場合、悪質な加害者は、任意保険をつかって弁償しようとせず(任意保険をつかうと、年間の保険料が高くなります)、「訴訟を起こせるものなら起こしてみろ」という態度にでることが多かったという「いきさつ」があります。

 今でもそうですね。
 少額の紛争の時「法的処置をおとりください」という弁護士は結構います。


 なお、弁護士が報酬額を引き上げるために審理を長引かせているとの指摘も出ていて、日本弁護士連合会は実態把握に乗り出しているのは事実です。

 仕事の少ない弁護士が、物損事件を時給制(タイムチャージ)で事件を受任します。
 時給制(タイムチャージ)ですから、時間をかければかけるだけ報酬が増加していきます。
 もらうのは保険会社です。

 例えば、経済的利益が10万円の訴訟に、何十時間もかけて、何十万円取るというのは、誰がどう考えても「おかしい」ですよね。

 背に腹は代えられないという事情もあるのかもしれません。

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