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2014年バックナンバー

アンネの日記や関連書籍の損壊犯不起訴に

少し昔の話ですが、東京都内の図書館などで「アンネの日記」や関連書籍が破られた事件がありました。

 器物破損罪になります。

 一連の事件は、平成25年2月から発生し、都内8区市の図書館などで「アンネの日記」など310冊以上が破られ、警視庁は、平成26年4月、このうち杉並区の二つの図書館で起きた40冊以上の破損の容疑で男を逮捕しました。

 東京地方検察庁は4月16日、東京地方裁判所に鑑定留置を請求し、平成26年6月16日まで専門家による精神鑑定が実施されていた。

 被疑者の氏名が公開されませんでしたね。

 平成26年6月19日、東京都内の図書館などで「アンネの日記」や関連書籍が破られた事件で、警視庁に器物損壊容疑などで逮捕されて勾留中の無職の男(36)が、東京地方検察庁の請求で行われた精神鑑定で「犯行時は心神喪失の状態にあった」と診断されたことが捜査関係者への取材でわかったそうです。

 マスコミは、精神病患者で、心神喪失とされる被疑者の氏名は公表しません。

 昭和57年、日本航空機が羽田沖で墜落事故を起こしました。

 K機長が、着陸態勢で逆噴射をさせたことから墜落しました。
 K機長は、航空法第75条によれば、機長は事故の発生時に乗客の救助を率先しておこなうよう義務づけられているが、K機長はそれらの職責を放棄し、乗客に紛れて脱出しました。

 韓国のセオゥル号の船長が、真っ先に脱出と聞いて、日航機羽田沖墜落事故を思い出してしました。

 K機長は、業務上過失致死傷罪により逮捕されましたが、精神鑑定により「妄想性精神分裂病」と診断され、心神喪失の状態にあったとして検察により不起訴処分となりました。

 「精神分裂病」という病名は「懐かしい」ですね。
 日本精神神経学会の理事会において、平成14年、わが国で用いられてきた「精神分裂病」を「統合失調症」に名称を変更されました。
 ちなみに「痴呆症」も「認知症」に変わっています。

 「逆噴射」「心身症」や副操縦士が叫んだ「キャプテン、止めて(やめて)ください」が流行語になりました。


 話を元に戻して、「アンネの日記」や関連書籍が破られた事件の被疑者は、不起訴処分となります。

 一口に、不起訴処分と言っても、いろいろな種類があります。

「事件事務規程」

 75条2項によれば、検察官が、不起訴処分(公訴を提起しない処分)とする理由として、以下の20があがっています。
 私は、司法修習生の検察修習時代、起訴状を起案するほか、不起訴裁定書の起案もしていました。もちろん、ワープロなどありませんから「手書き」です。

(1)被疑者死亡
(2)法人等消滅
(3)裁判権なし
(4)第1次裁判権なし・不行使
(5)親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消し
(6)通告欠如
(7)反則金納付済み
(8)確定判決あり
(9)保護処分済み
(10)起訴済み
(11)刑の廃止
(12)大赦
(13)時効完成
(14)刑事未成年
(15)心神喪失
(16)罪とならず
(17)嫌疑なし
(18)嫌疑不十分
(19)刑の免除
(20)起訴猶予

 「アンネの日記」や関連書籍が破られた事件の被疑者は、「(15)心神喪失」です。
 K機長が不起訴になったのも同じ理由です。

 一般に、不起訴で多いのは「(20)起訴猶予」とされています。

「被疑者補償規程(法務省訓令)」

被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき、事件事務規程(昭和62年法務省刑総訓第1060号大臣訓令)72条第2項に定める「罪とならず」又は「嫌疑なし」の不起訴裁定主文により、公訴を提起しない処分があつたときは、身体拘束期間に応じた補償金が出ますが、「心神喪失」は補償金がでません。

 間違って起訴されて「心神喪失」により「無罪」となれば、補償金は出ます。

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