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2014年バックナンバー

香港の民主派の抗議活動

香港のトップを選ぶ行政長官選挙をめぐり、中国側が決めた「普通選挙」の仕組に反発する民主派の抗議活動が、平成26年9月28日に始まりました。

 政府庁舎が集まる金鐘(アドミラルティ)の周辺から次第に広がり、さらに、大手金融機関が集まる金融街「中環」(セントラル)まで、夜には、東にある銅鑼湾(コーズウェイベイ)や、九竜地区の旺角(モンコック)にも飛火しました。

 平成26年10月1日時点においても、香港島と対岸の九竜地区の繁華街にも、デモ隊が占拠しています。
 一部の銀行は営業を見合わせており、経済活動にも影響が出てきています。

 発端は、平成26年8月31日、中国・全人代常務委員会が、現在の財界中心の1200人の選挙委員による制限選挙で選ばれている香港の行政長官を、平成29年の選挙からは普通選挙で選んでもよいとの決定を行なったことにはじまります。

 一見すると民主化の進展のように見えますが、北京の許す「普通選挙」には条件がついていて、中央政府は、現在の選挙委員会を「指名委員会」として存続させ、この委員会で過半数の指名を得た候補者だけが選挙に出馬できる制限をかけました。
 
 ビジネスを重視する財界の委員(=民主派)が、北京(=中央政府)に指名される可能性はほとんどないため、民主派は立候補の道を事実上閉ざされたことになります。

 「外務省・香港の返還」をご覧くださいい。

 中国は、香港のイギリスからの返還に際し、「一国二制度」、具体的には、社会主義国である中国がその特別行政区である「香港で社会主義の制度と政策を実施しないこと」(基本法序文)で、「香港特別行政区は社会主義の制度と政策を実施せず、従来の資本主義制度と生活様式を保持」(基本法第5条)することです。この状況は「50年間変えない」(基本法第5条)ことになっています。

 しかし、現在の財界中心の1200人の選挙委員による制限選挙で選ばれている香港の行政長官が、北京(=中央政府)の意のままということになれば、実質的に、「一国二制度」は崩壊します。
 平成29年は香港返還20年で、50年にはとうてい及びません。

 今回の決定により、1980年代の民主化の開始以来30年以上にわたって民主派が求め続けてきた民主化が、欧米や日本・台湾のような「真の民主主義」ではなく、中国政府の意向を反映する独特の選挙という形で決着させられようとしています。

 北京の「国家の安全」と、民主派の「真の民主主義」は、互いに相容れない要求であり、双方の対立の解決は難しく、今後長期にわたって、香港ではデモや集会等の繰り返される不安定な状況が続く恐れがあります。


 台湾の親中派も、香港の現実を見ていると、いよいよ中国との距離を置こうという勢力が増すでしょう。
 永遠に、一国二制度にすると中国が言っても「聞く耳」はもちません。

 中国にとって、一種の「賭け」です。
 現在の習体制は、追い詰められているように見えます。

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