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2014年バックナンバー

死人に口なし

朝日新聞社は、平成26年5月20日の朝刊にて、事故当時の福島第一原発の所長であり、平成25年に死去した吉田昌郎氏が政府の事故調査・検証委員会の聴取りに答えた証言記録、いわゆる「吉田調書」を入手したとして、記事を掲載しました。

 この中で、朝日新聞社は「福島第一原発の2号機が危機的な状況に陥っていた平成23年3月15日「第一原発にいた所員の9割に当たる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた」と報じました。

 私も、この記事を前提として、コラムを書いています。
 「お詫びして」「訂正」いたします。

 「東京電力の社員の逃亡」


 朝日新聞社の、木村社長は、平成26年9月11日、朝日新聞東京本社で記者会見し、東京電力福島第1原発事故で政府の事故調査・検証委員会が行った吉田元所長の聴取記録(吉田調書)を基に「所員が吉田氏の命令に違反し撤退した」などと報じた記事は誤りで、取消すと発表しました。

 木村社長は「命令違反とした表現を取消す。東電の関係者に深くおわびを申し上げる」と謝罪し、杉浦伸之編集担当の解任するとともに関係者を処分し、社長自身も社内改革後に進退を判断する意向を示しました。

 朝日新聞社の「福島第一原発の2号機が危機的な状況に陥っていた平成23年3月15日「第一原発にいた所員の9割に当たる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた」ととの報道に対し、産経新聞は、平成26年8月17日、吉田調書を入手し「吉田元所長は『退避』は指示しているものの『待機』を命じてはいない。反対に質問者が『すぐに何かをしなければいけないという人以外はとりあえず一旦』と尋ねると、吉田氏が『2F(第2原発)とか、そういうところに退避していただく』と答える場面は出てくると反論しました。


 政府は、平成26年9月11日に吉田調書の全文を公開しました。
 公開には、全く問題がないわけではないのですが、本件の場合、正しい判断と思います。

 吉田元所長の発言の中で、「命令に違反」との記述はありませんでした。

 朝日新聞は「逃げ切れない」と判断したのでしょう。
 謝罪会見を開くということになったという次第です。


 朝日新聞は、吉田元所長が生存していたら、あのような記事を書いていたでしょうか。
 書いていないと思います。
 「死人に口なし」、一番卑怯な手口です。

 また、吉田調書が公表されていない時点において「言った言わないの世界なら嘘をつきとおせ」というのも、卑怯なやり方です。


 弁護士としても、自戒する点もあると思います。
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