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2014年バックナンバー

ドイツの紛争地域への武器供与

平成26年9月1日、ドイツ政府は、イラクでイスラム過激派組織との戦闘を続けるクルド人の部隊に 対戦車ミサイルなどを供与することを決めました。

 紛争地への武器の供与を自粛してきた、これまでの外交方針の転換につながる動きと受け止められています。

 供与する武器は、対戦車ミサイルの発射装置30基とミサイル500発、それに自動小銃1万6000丁などで、今月下旬までにクルド人の部隊に渡される見通しです。

 ドイツは、第2次世界大戦を引き起こした教訓から、紛争地域への武器の供与は原則として自粛してきました。

 今回の決定について、政府は例外的な措置だとしていますが、野党は長年の政府の外交方針の転換につながる動きだと強く反対しています。

 もっとも、野党といっても、CDU/CSUとSPDの大連立ですから、連邦議会議員630議席のうち、与党が503議席を占めていて、「野党」といっても、全く力はありません。


 ただ、平成26年8月29日に公共放送が発表した世論調査でも、「武器の供与に反対」と答えた人は60%と「賛成」の34%を上回っていて、今回の決定を巡り国民の反発も予想されます。
 ドイツが過激派のテロの標的となることへの不安も国内では根強いものがあります。

 フォンデアライエン国防相は20日の会見で「武器や弾薬を提供する用意がある」と表明。独紙のインタビューでも「小切手だけ出す外交の時代は終わった」と軍事貢献への積極姿勢を強調しました。

 ドイツでは、平成12年制定の武器輸出原則に従い、連邦首相や国防相らで構成する連邦安全保障会議が輸出の可否を決定しています。

 これまで人権弾圧国家や紛争当事国への武器供与を禁じてきたのですが、しかし、緊迫するイラク情勢を受け、既にアメリカが空爆を始め、イギリス・フランスもクルド人勢力への武器・弾薬供与を決定していて、「中東の混乱にドイツが無関心でいてはならない」と、従来の原則から一歩踏出したことになります。

 第2次大戦を招いた反省から、戦後のドイツ(ドイツ連邦共和国)は、軍事力の行使におおむね消極的な立場を取ってきました。

 コソボ紛争で、セルビア空爆には参加しましたが、イラク戦争やリビア攻撃は参加を見送りました。

 今年1月、ドイツのガウク大統領は「ドイツは過去への罪悪感を理由にして、世界から目をそむけてはならない」と演説し、軍事的貢献の必要性を指摘しています。


 日本も、いつまでも「小切手だけ出す外交」を続けられるかどうかはわかりません。

 そういえば「ドイツをみならえ」と「なんとかの一つ覚え」のように主張する人は、どう考えているのでしょう。
 また「なんとかの一つ覚え」のように主張する国もあるようですが、どうするのでしょう。

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