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2014年バックナンバー

seamanship

平成26年4月16日午前8時55分ごろ、韓国南西部の珍島付近を航行中だった仁川発済州島行きの旅客船の船体が突然左舷側に傾き、沈没しました。

 平成26年4月20日午前12時時点で、死者は50人、安否不明者は252人ということです。

 なくなられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、安否不明者に生存者がおられることを祈念いたします。


 船長(68)、事故時に指示をしていた女性三等航海士(25)、男性操舵手(55)の三容疑者が逮捕されました。
 つまり、船長、三等航海士、操舵手は、旅客より先に救助されたということになります。

 タイタニック号のスミス船長を引き合い出すまでもなく、「seamanship」からして、船長は、乗客の避難を確認した後に、離船すべきものです。
 なお、重傷を負うなどして、指揮できなくなれば、次順位の人に職務を委任したうえで、離船するのはやむを得ませんし、意識がなくなければ、救助され離船しても問題はありません。

 「船長と機長」をご覧ください。

 日本の場合を考えてみます。

 船員法第12条に以下の規定があります。
「 船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない」

 船員法第11条には、以下の規定があります。
「 船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わつて船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去つてはならない」 イタリア人船長が乗客より先に逃走しています。

 イタリアの豪華客船コスタ・コンコルディアの座礁事件は、業務上過失致死の疑いで逮捕されたスケッティーノ船長が、乗客より先に「逃走」したという点が「スポットライト」を浴びています。


 日本人でも、日航機逆噴射事件のときの機長は、真っ先に逃亡しています。
 業務上過失致死傷にとわれるべきところですが、統合失調症のため不起訴となり、以後、実名ではなくてイニシャルで呼ばれるようになっています。


 日本の海難事故の場合どうでしょう。

 「海上保安庁・救難現場の最前線」をご覧ください。

 平成21年11月13日午前5時25分頃、フェリー「ありあけ」(乗客7名、乗組員21名)から海上保安庁運用司令センターに「和歌山県新宮市沖約30キロメートルの熊野灘を航行中、右45度ぐらいの船体傾斜が生じ、救助を求める。」旨の通報が入りました。
 海上保安庁では、直ちに現場に船艇・航空機を発動するとともに、特殊救難隊及び関西空港海上保安航空基地機動救難士を出動させ乗船者の救助に当たりました。
 折からの強風による荒天と右側に大きく傾斜した船体の影響で救助活動は難航しましたが、同日午前7時30分頃から午前9時5分頃までの間に、同船甲板上に降下した機動救難士とヘリコプターが連携して吊上げ救助を行い、乗員・乗客21名を、また、午前10時20分頃、救命筏で退船した乗員7名を巡視船すずか搭載の警備救難艇により救助しました。
 この救助事案は、フェリーがいつ横転するかもしれない中で時間との勝負となり、正に危機一髪の救助となりました。


 船長以下の乗組員は、客室のドアが開かなくなる恐れがあることから、乗客らを客室から避難させ、乗客を甲板に引張り上げました。
 甲板に待機していた乗客らは、およそ2時間後、救援に向かった海上保安庁のヘリコプターで救助されました。
 乗客が全員救助された後に、乗組員が順番にヘリコプターに乗りました。21名です。
 最後まで船を守った船長や1等航海士ら7人は、ヘリコプターに乗りきれず、救命ボートを降ろして海に飛込みました。
 この7人も、救命ボートで漂流中に全員救助され、死者は1人も出ませんでした。

 なお、新宮市沖約30キロメートルの熊野灘での事故でした。
 乗員・乗客が28名と少ないこともあったでしょう。

 日本人が船長で、乗組員が日本人なら、もっと多くの人命が救助されたかも知れません。
 そもそも、事故が起きなかったかも知れません。

 韓国は、日本の救助申出を2度拒絶したそうです。
 この事故態様では、救助できなかったのかも知れませんが・・

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