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2014年バックナンバー

司法試験合格者数

自民党の司法制度調査会は、平成26年4月9日、司法試験合格者数を平成28年までに「1500人程度を目指すべきだ」とする提言をまとめました。
 ここ数年2000人前後で推移している合格者数では「法曹の質を低下させる可能性が高い」ためなどとしています。

 公明党の法曹養成に関するプロジェクトチームも同日、合格者数を「まずは1800人程度」とする提言をまとめました。

 政府の法曹養成制度改革推進会議が、適正な法曹人口などについて平成27年7月までに提言します。


 政府は司法試験合格者数を「年間3000人程度」とする計画を、平成14年に閣議決定しましたが、実現しないまま平成25年7月に撤回していました。


 司法試験の合格者が増えれば、従前の成績では合格していない人が合格するわけですから、当然、「法曹の質は低下」します。
 それは、当然「織込み済」でした。

 ただ、それだけではありませんでした。

 司法試験の合格者が増えすぎて、弁護士が「食べられない」職業になってきています。

 事件数は横ばいなのに、弁護士数が増えれば、弁護士の売上が減ります。
 パイが同じなのに、分ける人数が増えるのですから、1人あたりの「取り分」は減ります。

 法律事務所は、事務所賃料や人件費などの固定経費がほとんどで、原材料費などの変動経費がほぼ0です。
 何を意味するかというと、売上が減少した分だけ所得が減るということになります。
 売上が、固定経費を下回れば赤字です。

 また、経営が苦しくなると、ダンピングをする弁護士がでてきます。
 もちろん、自分で自分の首を絞めるような行為ですが、背に腹は代えられないようです。
 弁護士の着手金・報酬が安ければ安いほどいいという依頼者が一定数いますから、ダンピング競争に加わらない弁護士の売上は減りますし、ダンピング競争に加わる弁護士も、単価が減少して売上は減ります。

 将来のことを考えてみましょう。
 2000人合格で、裁判官・検察官になる人を除いて1800人弁護士が増える計算になります。
 司法試験に合格しても、食べていけないという理由で弁護士になることを断念する人がいたとしても、それほどの数にはなりません。
 他方、歳をとって引退していく弁護士は、司法試験合格者500人時代に司法試験に合格した弁護士ですから、せいぜい、年間400人くらいのものでしょう。
 もちろん、若くても食べられなくなって弁護士登録を請求抹消する人もいますが、それほどの数になりません。

 弁護士が増えないようにするには、司法試験合格者を、歳をとって引退する弁護士の、司法試験に合格した当時の合格者数である500人くらいに減らさなければなりません。
 現実的に、合格者が2000人であろうが、1500人であろうが、1000人であろうが、現在よりも将来の方が、弁護士数が増えることは確実ですから、現在よりも将来の方が、経営状態が悪くなっても良くなることはありません。
 昨日よりも今日の状態が悪くなり、今日より明日の状態が悪くなり、明日より明後日の状態が悪くなることは確実です。
 それが、最低でも20年、30年と続くことになります。
 絶望しない方が不思議ですね。
 私の同期くらいになると、通常「逃切って」います。いろいろな意味での蓄えがあります。
 司法修習同期の弁護士の平均年齢は64歳くらいです。私より7年くらい、余分に勉強しています。先はさほど長くありません。

 
 大学生は、法曹界への志願をしないようになります。つまり、法曹志願者が減ることになります。
 とりわけ、弁護士を選択しようとするのは、「本当に優秀な人」あるいは「目先の利かない人」あるいは「自分だけは大丈夫という過信家」だけになるでしょう。

 少し頭の働く学生なら、構造的不況業種となった法曹、とりわけ弁護士の道を選択しなくなります。
 皮肉なことに、司法試験の合格者が多いほど法曹志願者が減るという理屈になりますし、現実に法曹志願者は減っています。


 司法試験の合格者が増えれば、従前の成績では合格していない人が合格するわけですから、当然、「法曹の質は低下」するのは前記の通りです。

 さらに、優秀な学生が、法曹を敬遠するようになるということになります。
 優秀な学生が、法曹を敬遠するようになれば、さらに「法曹の質は低下」します。

 2重の意味で、法曹の質は低下します。


 ですから、「法曹の質の低下を緩やかにするために」司法試験合格者数を減らさなければなりません。
 ただ、既に遅いでしょうね。

 なお、弁護士でも、儲かる人は儲かっています。
 若い弁護士さんでも、これから弁護士になる人も、能力と商才次第で、儲けることはもちろん可能です。
 昔は、普通に弁護士の仕事をしていれば、全員が、それなりに儲かっていました。
 これからは、儲かっている弁護士が、少数になるというだけの話です。
 能力と商才があれば悲観することはありません。

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