2014年バックナンバー
紙の建築家
ハイアット財団トム・プリツカー会長は、平成26年3月24日「自然災害に苦しむ人々のため創造的かつ人道主義的な建築をして貢献したことを高く評価し、坂(ばん)茂氏(56)を今年の受賞者に選定した」と発表しました。
「建築界のノーベル賞」と呼ばれる同賞は、米国のプリツカー一族が運営するハイアット財団が1979年に制定したものです。
坂氏は、一般建築を手掛ける傍ら、社会的に弱い立場の人々の住宅問題に目を向け、災害支援に尽力してきました。
ルワンダ、神戸、新潟、中国四川省、ニュージーランド...。世界中の被災地や紛争地を飛回わっています。
現地に人を集めてチームを結成し、再生紙の筒「紙管」など低コストの材料を使ってシェルターや住宅を設計しました。
東日本大震災では、避難所でプライバシー確保のための「間仕切りシステム」を用いました。
50カ所の避難所に1800ユニット(1ユニットは2m×2)を設けました。
宮城県女川町では建設用地が不十分なため多層の仮設住宅が必要だと提案、コンテナを使った3階建て仮設住宅を建てています。
仮設建築物でも住み心地や美しさなどの質の高さを追求する姿勢から、利用者への温かなまなざしが感じ取れるとされています。
世界の舞台での日本人建築家の活躍はプリツカー賞だけにとどまりません。
女性建築家・妹島和世氏は平成23年、ベニス・ビエンナーレ建築展の総監督をつとめました。
若い建築家たちの躍進も目立ちます。
平成23年2月22日、ニュージーランドでマグニチュード6.3のカンタベリー地震発生しました。
日本人を含む185名の命を奪ったこの地震で、クライストチャーチの中心部にあったゴシック様式の大聖堂も崩壊し、この街のシンボルもなくなってしまいました。
そのクライストチャーチ大聖堂に代わる臨時の聖堂がこの度完成し、サランラップの芯の様なボール紙でできた「紙の聖堂」を無償で設計したのが、坂茂氏です。