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2014年バックナンバー

ドイツ大統領のギリシャ訪問

ドイツのヨアヒム・ガウク(Joachim Gauck)大統領は、平成26年3月6日、7日と、第2次世界大戦中にナチス・ドイツの部隊が住民を虐殺したギリシャ北部のリギアデス村を訪れました。

 「独大統領、ギリシャ国内のナチス虐殺現場を訪問 新たな賠償は否定」

 ガウク大統領は、「私はドイツを代表し、不名誉の念と苦悩を込めて、犠牲者のご家族の方々に許しを請います」「私は、犯罪の張本人たち、そして戦後の多くの指導者たちが語ろうとしなかったこと、ここで行われたのは残虐な不正義だったのだということを表明し続けると誓い、この非道な犯罪の犠牲者の前にこうべをたれます」と述べました。

 ちなみに、ドイツの大統領には、政治的権限はほとんどなく象徴的存在で、連邦首相(現在はアンゲラ・メルケル)が、連邦の政治的権限を持っています。


 平成25年4月、ギリシャが、第2次世界大戦の賠償をドイツに求める考えを明らかにしたとの経緯があります。

 ギリシャ外務大臣は「厳しい占領期間中のギリシャ人の苦痛に関する正義・真実の回復」が必要だ」「ドイツ占領中は、他国に例を見ないほどギリシャ国民が苦しみ、飢え、略奪された厳しい時期」だったと表現しました。
 請求額は、1620億ユーロ、約22兆円です。

 確かに、第二次世界大戦当時、ドイツはギリシャと戦って勝利し、1941年から1944年にかけて、ドイツ、イタリア、アルバニアがギリシャを分割占領したという歴史があります

 債務危機に見舞われているギリシャでは、ドイツが支援と引き換えに厳しい緊縮財政を押付けていると反発する意識が強く、ギリシャはドイツから第二次世界大戦中の損害についての賠償をとって「楽をしよう」ということですね。


?しかし、ガウク大統領は、平成26年3月6日のギリシャの閣僚との会談で、債務危機とその後の緊縮措置の波に見舞われたギリシャの背負う「重荷」に「深く注意を払っている」が、賠償は戦争直後に済んでおり、ギリシャがさらなる支払いを求める法的な道は閉ざされている、という従来のドイツの立場を改めて表明しました。


 ドイツは、第二次世界大戦後、周辺諸国に賠償をしたと誤解している人が多いです。

 しかし、ドイツが賠償しているのは、ほんのわずかなものを除けば、ユダヤ人大虐殺(ホロコースト)による、ユダヤ人とイスラエルへの賠償です。
 ギリシャへの賠償は、ほぼ、していないのに等しいです。

 ドイツは、東西に分割されたため、周辺国に賠償する余裕はありませんでしたし、周辺国としても、第二次世界大戦が、第一次世界大戦のベルサイユ条約によりドイツに莫大な賠償義務を課したため惹起されたものであることはわかっています。
 近隣国家は、賠償請求を差控えましたし、個人は国際法に基づく請求の権利を持たず、また国内制定法の制定はあくまで道徳的な義務によるという解釈です。

 ドイツは統一され、EUの死命を制するほどの経済強国になりました。

 しかし、ドイツとしては、ユダヤ人大虐殺(ホロコースト)による賠償を除き、すべて決着済みとして、賠償請求に応じる意思はありません。

 ある意味、当たり前のことでしょう。
 戦後約70年、いつまでも、戦争のことをいっていても始まりません。
 ただし、ナチスによる、ユダヤ人の抹殺の試みだけは、例外です。

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