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よもやま話 バックナンバー1/2

なりすまし

「なりすまし」という言葉があります。

 1つには「ネットワーク上で、他人の名前やIDを利用して行うこと全般」を指します。

 ただ、本人から許可をえている分には問題ないようです。
 奥さんが、夫から依頼され、夫名義の口座から、インターネットバンキングで振込むようなものです。

 本人から許可をえていない場合は、一般には、IDとパスワードの盗用により、サイトの認証システムを欺いて、目的の内部システムに侵入し、操作するわけです。

 刑法246条の2に「電子計算機使用詐欺」罪が規定されています。
 「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する」
 昭和62年6月新設とありますから、私が、裁判官に任官した昭和55年にはなかったことになります。

 刑法258条の「公用文書等毀棄」罪もいつのまにか変わっています。
 「公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する」
 刑法259条の「私用文書等毀棄」罪もいつのまにか変わっています。
 「権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3年以下の懲役に処する」


 もう一つ、「IDやパスワードなどのアクセス権を盗用せず」「インターネット上掲示板や、匿名メールアカウントを利用して、あたかも第三者であるかのように振舞うこと」も「なりすまし」と呼ばれます。

 他愛のない話なら問題ないのですが、名誉毀損にあたるような書込みをされると、民事訴訟の被告になったり、刑事告訴されることがあるかも知れません。

 「IDやパスワードなどのアクセス権を盗用」していないのですから、「なりすまし」の被害者であることはが、証明可能かも知れませんが、「うっとうしい」話ではあります。

 昔から「偽造」「なりすまし」はありましたね。

 江戸時代の対馬藩の「国書偽造」は有名です。

 ところで「鶺鴒(せきれい)の花押」という話をご存じでしょうか。

 伊達政宗は、豊臣秀吉から、大崎・葛西一揆への煽動の疑いをかけられます。
 豊臣秀吉は、伊達政宗の監視役として、臣下の蒲生氏郷を会津へ配置します。
 その蒲生氏郷のもとへ、大崎・葛西一揆を煽動する伊達政宗の密書が届けられるのです。
 その密書には疑う余地のない「鶺鴒(せきれい)の花押」が書かれていました。
 花押とは武士が自筆であることを証明するサインのことで、政宗の花押は「「鶺鴒」(鳥です)が描かれ「鶺鴒の花押」と呼ばれていました。

 言逃れのできない、証拠を突きつけられた伊達政宗は「本物の花押には鶺鴒の瞳(まなこ)に針の穴が空いています。比べて下さい」「こういうこともあろうかと、日頃から注意して空けておいたのです」と弁明します。

 豊臣秀吉は「おうおう針の穴が空いている」と認めます。
 本当は、穴など空いていなかったようですが、豊臣秀吉は、伊達政宗を見逃してやったというストーリーでした。

 「なりすまし」の被害にあいたくなかったら、自分の文章などに、他の人には気づかないような「細工」をほどこしておくのが効果的です。
 盗作をされたときに、盗作とはっきりいえる根拠となります。

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