本文へ移動

よもやま話 バックナンバー1/2

誤審

今大会、ワールドカップの「誤審」の報道が目立っています。

 誤審自体は昔からあったものでしょうが、ビデオなどの映像技術が進歩したため、「はっきり」「目立つ」のかも知れません。

 ただ、野球などのスポーツと異なり、流れを止めてビデオで確認ということはできませんね。
 テレビで、サッカー観戦をしていると、野球観戦と異なり、トイレに立つ時間がないことに気づかれる方も多いと思います。


 「誤審」といえば、裁判でもありえます。

 よく「間違った裁判はけしからん」と言う人がいますが、「裁判に間違いはない」という前提なら、高等裁判所や最高裁判所は要りません。
 第1審裁判所だけで十分ということになります。

 逆に、高等裁判所や最高裁判所があるということは、「誤審」があるという前提の制度ですね。

 「誤審」は悪いものでしょうか。

 まが、民事・家事事件を検討します。

 民事事件なら、真実と異なっていても、証拠がなければ敗訴することがありますし、当然の前提です。
 例えば、赤の他人に、現金で100万円貸して借用書も何の証拠もないという場合などは、証拠がありませんから「敗訴」が正しい判決です。
 先進諸国には、一定の金額以上の契約は「書面」、多額の場合は「公正証書」がなければ、それだけで敗訴という制度をとっている国があります。
 それと同じと考えれば問題ありませんね。

 また「Justice delayed is justice denied」(裁判の遅延は正義の否定)という格言もあるくらいですから、民事裁判は迅速でなければなりません。

 多少間違っていても、さっさと判決して、間違っていれば、上級審で是正してもらえばいいのです。
 地方裁判所で敗訴した人が「まだ、高等裁判所、最高裁判所がある」という言葉を宇人がいます。
 実は、地方裁判所の裁判官も「たとえ間違っていても高等裁判所がある」と思っています。「どうせ間違うなら、支払えという裁判をすべきである。支払わなくてもいいという判決をすると、高等裁判所で和解ができない」と公言する裁判官もいます。

 実は、私も、裁判官時代この考えでした。
 正確を期すためと称して事件を「握って」いては、訴えている人にとって「たまったものではありません」。
 難しい事件だからといって、転勤まで「握りつぶされ」たりしたらたまりませんね。

 民事事件は、しょせん「金の争い」、真実を追究する必要もないでしょう。
 「さっさと」「判決してほしい」というのが本音でしょう。
 弁護士の立場からすれば、淡々と控訴すればいいのです。
 他の弁護士に依頼するということになっても「縁がなかった」ということで終わりです。


 ただ、刑事は別です。

 証拠が不十分であれば、真犯人でも無罪が正しい裁判です。
 証拠が十分でなく有罪にされたらたまったものではありません。

 ただ、無辜(無実)の人が有罪とされるということは正しくありません。
 高等裁判所、最高裁判所で是正されるべきです。
 また、新たな証拠があれば、再審で無罪というのも当然です。
TOPへ戻る