よもやま話 バックナンバー1/2
ネガティブ・キャンペーン
「ネガティブ・キャンペーン(Negative campaigning)」をご存じでしょうか。
相手の政策上の欠点や人格上の問題点を批判して信頼を失わせる戦術のことをいいます。
通常の「ネガティブ・キャンペーン」は、見ていて見苦しいことがあります。
自分・自陣の優れているところを売込めばいいのであり、相手の揚足をとるような手段を使って勝つというのは、見ていて気持ちの良いものではありません。
もっとも、訴訟では「ネガティブ・キャンペーン」的な訴訟活動をすることがよくあります。
もちろん、自分の主張をあげ、それを裏付ける証拠をあげるということは大切です。
しかし、そんな簡単な事件なら、訴訟になりにくいですし、なってもあっさり勝敗がついてしまいます。
通常「がちんこ」で事実関係を争う事件なら、相手の「弾劾(だんがい)」も大切です。
「弾劾」という言葉は難しそうに見えるかも知れませんが、裁判で「弾劾」というのは「信用性を低める」という意味です。
通常、双方の提出している証拠から自分の主張に沿う主張を並べて、自分の主張を展開していくのがオーソドックスなやり方ですが、あまり説得力がないことがあるというのも事実です。
相手の主張が不合理であるということを強調することも大切です。
その方法の1つに「背理法」があります。
「背理法とは、「相手の主張が正しい」と仮定すると、「本来、こういう書面が作成されていなければならない」「本来、こういう言動をとっていたはずである」「本来、このような結果が生じていなければならない」、しかし「こういう書面が作成されていない」「こういう言動をとっていない」「このような結果が生じていない」、よって、「相手の主張は誤りである」と記載するわけです。
これは、視点を変えるという点でも結構有効なやり方です。
また、相手の主張が相反している(あいはんしている)場合、主張する事実が食い違っている場合、主張間の矛盾をつくことも大切です。
弁護士さんも忙しいのか、昔は、ずつと前に書いた書面と今回の書面が矛盾しているというものが多かったですが、最近は、最近の書面、極端な場合は、同一書面で主張が矛盾していることが増えてきています。
もちろに、相手の主張の「いずれか」が事実ではないということになりますし、また、重要な点の矛盾の主張の相反、主張の矛盾は、相手方の主張全体の信用性をなくすのに有効です。
ですから、弁護士の各書面に「ネガティブキャンペーン」的な主張が入っていてることは珍しくなく、だからといって「品がない」とかいわれる恐れはありません。
訴訟は、通常2当事者間で争われるものですから、自分の主張の信用性高めるのと、相手の主張の信用性を低めるのと同じ効果を発生します。
ですから、こと、訴訟に限っては「ネガティブ・キャンペーン」は、当たり前ということになります。