本文へ移動

よもやま話 バックナンバー1/2

せり上がり

今年(平成22年)の初場所初日に、横綱・白鵬が、横綱の土俵入りで「不知火型」の手順を間違えるというハプニングがあったそうです。

 柏手を打って、四股をふみ、そこから不知火型なら両手を広げ、雲龍型なら左手を胸にあて右手を広げ、いずれも「せり上がり」をするというのが「お約束」のようです。
 「せり上がり」が土俵入りのハイライトで、そこから、再び四股をふみ、その際、観客から「よいしょ!」と掛け声がとぶという手順です。

 白鵬の場合結局、「せり上がり」をせず、さっと立ち上がって、四股をふんで「おしまい」にしたようです。
 観客は気づかないまま、四股の際「よいしょ!」と掛け声をとばしたのでしょうか。

 土俵入りのハイライトを抜かしたからといって、観客が入場料を返せというはずもありません。
 「何か?」(「Anything else?」(英)、「Sonst noch etwas?」(独))と開き直るのも「横綱の品格」にかかわるのでしょうね。
 朝昇龍なら言いかねませんが、白鵬は平謝りだったそうです。


 という「せり上がり」ですが、どこかで聞いた記憶があります。
 デジャビュでしょうか。

 と考えていたら、昔、司法修習生の時、民事裁判・民事弁護で「要件事実」を勉強しているとき「せり上がり」というのがあったということを思い出しました。

 「せり上がり」とは、「請求を主張するに当たり、請求原因(Kg(Klagegrund))事実に、抗弁((Einrede))となる不利益な事実が含まれる場合に、抗弁を待たずに再抗弁((Replik))を構成する事実も主張するこという」と定義されているようです。

 そして「せり上がり」の主張を忘れると、「主張自体失当」となり、赤点をとって、その科目を落第してしまうのかどうかはわかりません。
 まだ、不動産の即時取得の主張より「まし」な気がします。

 請求の主張のとき、再抗弁事実をあわせて主張するときに限らず、抗弁の主張のとき、再々抗弁((Duplik))事実を主張することも、さらに、再抗弁の主張のとき再々々抗弁((Triplik))事実を主張することも・・と続いたような気がするのですが、いかんせん、30年以上前のことで記憶が正確ではありません。

 私が裁判官時代には、民事訴訟の判決には、必ず「請求原因」「抗弁」「再抗弁」・・と記載したものですが、平成2年からの「新様式」の判決になってから、ほとんど姿を消しました。ただ、全くなくなったわけではありません。
 このころから、裁判所の判決が「ずさん」になったと思っているのは私だけでしょうか。
TOPへ戻る