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よもやま話 バックナンバー1/2

外注

法律事務所は、機密保持のために、他に仕事を外注するということはありません。
 もちろん、事務量が多くなれば、他の法律事務所との共同受任ということがありますが、弁護士同士であれば、すべての事件について「守秘義務」がありますから、問題はありません。

 ただ、一部仕事について「外注」するということはありえます。

 当事務所は、昨年はじめから、利息制限法引直し計算について、ある会社に外注しています。

 個人の債務整理は「任意整理」「個人民事再生」「自己破産」の3方法(あと1つの「特定調停」は、任意整理で代替できます。通常、弁護士が関与することはないでしょう。少なくとも、私はありません)しかありません。

 まず、任意整理ですが、3年を目途に、元金全額を分割返済するという方法ですから、各債権者の取引履歴に基づき、利息制限法引直しをして、各債権者の正確な債権額を知らなくてはなりません。
 もちろん、利息制限法に違反していない銀行、信用金庫、農協、あと、モビット、アットローン、キャッシュワンなどは計算するだけ無駄ですから計算しません。

 次に、個人民事再生ですが、債務額の5分の1(最低100万円)に圧縮し、3年間ないし5年間にわたって弁済していく方法ですから、やはり、各債権者の取引履歴に基づき、利息制限法引直しをして、各債権者の正確な債権額を知らなくてはなりません。
 引直し前の債務が500万円以下なら、支払う金額は100万円ですから、どうでもいいというわけにはいきません。債務者ごとに不公平になるからです。

 さらに、破産ですが、借金を0にするわけですから、債権額がどうであれ全く問題がないように見えます。
 破産は、全財産を債権者に按分する手続きですから、過払い返還請求によって得られた財産も、一般債権者に配当する、あるいは、債権者に案分弁済する必要があります(20万円以上の多額の場合です。それ以下なら、自分のものにできます)。
 ただ、過払いがある債務者の過払い請求をせず、破産・免責手続きが終了してから、過払い請求をして、債権者に分配することを免れようとする悪質な弁護士がでてきため(一見、依頼者に有利なように見えますが「ばれれば」免責が取消され、借金は完全復活します)、8年以上取引のある消費者金融・信販会社の場合は、取引履歴の提出が義務づけられました。

 ということで、債務整理は、高利のお金を全く借りていない場合などを除き、ほとんど取引履歴が必要になります。

 また、債務整理ではなくとも、全く借金はありませんが、従前高利のところで借りていて完済したので、過払い金の返還請求をしてほしいいう依頼者もいます。
 基本契約を解除していないと、ブラックリストにのりますから(ブラックリストとには、「延滞」「任意整理」「民事再生」「破産」などのほかに、「弁護士受任」という「項目」があります)、基本契約を解除してもらってから、受任するようにしています。
 この場合、多寡は別として、100%過払い金が発生するのですが、やはり、取引履歴が必要になります。


 取引履歴により利息制限法に引直すためには、「取引日(借受日・返済日)」「金額」「借受・返済のどちらか」という3つの情報だけがあれば、あとは、利息制限ソフトが計算をしてくれます。
 何百行というデータがある取引履歴もあり、当事務所は、従前、事務職員に入力させていましたが、事務量が膨大になります。
 また、取引履歴の入力は、当事務所のように弁護士が1人ですと、結構、取引履歴の入力の必要数に「大きな波」があります。
 多量のときに、スポットで事務員の雇増しをして仕事が減れば事務員解雇(具体的には、人材派遣会社の利用)も検討しましたが、正確な入力ができる人材かどうかの見極めが難しいので断念して、入力作業の「外注」を選択しました。

 あるんですね。そんな業者が。
 当事務所の契約している外注業者は、「取引日(借受日・返済日)」「金額」「借受・返済のどちらか」を1行として、料金は1行4円20銭(消費税込みです)。
 今時、「銭」なんて単位は外国為替くらいでしか見ませんね。

 なお、機密保護ですが、個人の特定できる事項(氏名・会員番号など)は、すべてマジックインクで塗りつぶし、それをコピーしたものを(塗りつぶした原本を送付したのでは透けて見えます)郵送します。
 1週間で、エクセルファイルとして、電子メールで送信されてきます。

 ゴルゴ13ではありませんが、完全な「ナンバー取引」です。もちろん、貸金業者それぞれにフォーマットがありますから、外注先は、どこの業者の取引履歴かはわかります。
 それ以上のことはわかりません。興味もないでしょう。

 なかなか正確で、1000行ほどあった取引履歴について、相手の信販業者がチェックしたところ、1ヶ所「100,000」を「10,000」とする入力ミスが、1件指摘された程度に正確でした。
 相手に不利なミスは指摘されますが、自分に不利なミスは黙ってられるという可能性もありますが、当該信販会社については、そんな心配もないと思います。

 ちなみに、外注費は、実費として依頼者に請求はしていません。本来事務所の人件費ですから、事務所経費(電気・電話代と同じ扱いです)として処理しています。

 今年3月の確定申告書から、18年間「0」だった「外注費」欄に、具体的数字がはいることになりました。
 「期首在庫」「期末在庫」欄は永遠に「0」でしょうが・・

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