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司法 バックナンバー 2/3

弁護士の研修

法曹資格は、医師と同様、いわゆる「一生もの」ですから、一度取得すれば更新などは必要ありません。

 ただ、弁護士というのは「日々勉強」「日々研鑽」という職務ですから、言われなくても、通常の弁護士は、新法、重要な法改正などの勉強をしています。していないと、依頼者の期待に添えなくなる、端的にいえば、新法を知らないために、ミスをして依頼者に損害を可能性があるからです。

 かといって、日頃から多忙な職種ですから、大阪弁護士会は、会員である弁護士に研修の機会を与えるとともに、強制的に研修をしてもらうというシステムをとっています。

 前のコラムにも書いたのですが、大阪弁護士会は「弁護士会登録時」「5年目」「10年目」「15年目」「20年目」「30年目」に弁護士倫理の研修を実施しています。
 ちゃんと「倫理研修」参加してくれる弁護士さんは、通常問題を起こすことは少なく、逆に、参加していない弁護士さんに「問題児」が多いようです。

 強制といっても「正当な理由のない不参加者弁護士名の公表」という程度にとどまっています。ただ、研修不参加を繰り返すと、懲戒理由にはなる可能性があります。

 また、大阪弁護士会は、全弁護士に対し、業務分野に関わる研修を、毎年年間10単位(10時間)の講義を受講する義務を負わせています。通常、新法、重要な法改正などの解説の研修です。

 やはり、強制といっても「正当な理由のない不参加者弁護士名の公表」という程度にとどまっているのは、倫理研修と同様です。

 これは研修とは関係ありませんが、大阪弁護士会では、全弁護士に対し「法律相談」「国選弁護」「委員会活動」などの「特定公益活動」のうち1つを履行することを会員に義務づけています。
 基本的に「もうけ仕事」だけではなく「割に合わない公益的な仕事にも参加をお願いします」という趣旨です。
 これを怠った場合は、6万円の負担金が課せられます。


 弁護士会は、通常の会社組織のような「上命下服」のシステムにはなっておらず、「独立した自営業者の集合体」にすぎませんから、権限はほとんどないに等しいといっていいでしょう。
 その分、個々の弁護士が、自発的に、自己研鑽を積むことが期待されていますし、大半の弁護士が、言われなくても実行しています。
 問題は、これらを無視する一部の弁護士で、事後的に、懲戒権の発動などで是正するしかありません。

 懲戒されるということは「被害にあった人」がいるわけですから、未然に防ぐ従前の努力をする必要があります。
 ただ、弁護士は、他の弁護士が何をしているか知る機会がありませんから、「事前防止」は難しいですね。これ以上、被害者の発生を止めるというのが精一杯になってしまうというのが現実です。

 「弁護士さんだから」「間違いないだろう」と考えるのは、残念ながら「間違い」です。

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