司法 バックナンバー 2/3
罪の意識
法廷で検察官から無断欠席の理由を尋ねられ、「忘れてた」と被告人。それを聞いた裁判官は「ほんとに反省してんの?考えが甘すぎる。なめてるんじゃないの。裁判を」と語気を強めたとのことです。
地方裁判所では、原則、被告人本人が出廷しないと裁判手続きが進められません。
当該被告人は、2度、高給をもらっている裁判官と検察官の貴重な時間を浪費させたということになります。
今度欠席すれば、勾引(警察官が、裁判所まで被告人を連行する)ではすまず、勾留(拘置所に入れられ、刑務官が、手錠をかけて裁判所に出頭させる)ということになります。
検察官の求刑は、懲役1年6月だったそうです。
事案は、自分が使用する目的ではなく、預金通帳・印鑑・カードを転売する目的で、通帳をつくったということでしょう。
それが、なぜ「重罪なのか」ということが、当該被告人に理解できてないんでしょうね。
自分が自分の預金通帳をつくって転売する、「誰にも迷惑をかけていない」「何が悪いの」という感覚なんでしょう。
覚せい剤の自己使用者が、覚せい剤を自分で買って自分で使う、「誰にも迷惑をかけていない」「何が悪いの」と同じ感覚なんでしょうね。
覚せい剤は、ニュースを騒がせていますし、一発で逮捕・勾留されますから、悪いということは周知なんでしょうね。
自分が使用する目的ではなく、預金通帳・印鑑・カードを転売する目的で、通帳をつくることは重罪です。検察官の求刑が、初犯で懲役1年6月ということからわかるように、もちろん、万引きより重いです。万引きなら罰金もありえます。
現在、預金口座をつくるには、本人の身分確認がずいぶん厳格になっています。
他人の預金通帳をつかって、ヤミ金の振込口座にしたり、振込め詐欺の振込口座にしたり、マネーローンダリングに利用したりされれば、捜査はそこから先に進まなくなります。
巨悪が、別の口座を使って、何回でも犯罪を犯すことができるようになります。
ですから、自分が使用する目的ではなく、預金通帳・印鑑・カードを転売する目的で、通帳をつくることは重罪です。
ただ、初犯なら、実刑はありません。執行猶予です。
本件については、あくまで想像ですが、口座をつくって通帳を受け取った時点での捜査・起訴はないと思います。ヤミ金の振込口座にしたり、振込め詐欺の振込口座にしたり、マネーローンダリングに利用されたりして、当該被告人で捜査が先に進まなかったことから、捜査され、起訴されたのでしょう。
実害が出ていると思います。
本来は、「罪証隠滅の恐れ」で、逮捕・勾留して起訴した方がよかったのかも知れません。
ただ、法廷を無断欠席するくらい、規範意識のない人物とは思わなかったんでしょうね。
もっとも、もう一度やって、刑の執行を猶予された分とあわせて、服役することになるかも知れません。