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司法 バックナンバー 1/3

誘導尋問と誤導尋問

 「誘導尋問」とは何でしょう。

 通常「はい」「いいえ」で答えられる尋問をいいます。
 「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どのように」「なぜ」を聞く質問は、本来、逐一聞いていくべきです。
 尋問者が「答え」を言ってしまう尋問、例えば「あなたは、平成21年12月31日午後1時5分ころ、梅新交差点で、トラックと乗用車が衝突するのを見たのですね」と聞き、供述者が「はい」と言ってしまうと、尋問する意味がないですね。

 ですから、「主尋問」では「誘導尋問」が「原則禁止」となります。

 もっとも、一律に、誘導尋問を禁止してしまっては、いくら時間があっても足りません。

 また、民事訴訟では、主尋問をする方に「陳述書」を出させるのが普通ですし、尋問前に「証人テスト」と言って、本人や証人尋問のリハーサルをするのが普通ですから、「誘導尋問」を禁止してもあまり意味がありません。

 従って、相手方弁護士が「誘導尋問です」と異議を言うのは「ここは、記憶があいまいやな」「つっこみどころや」と判断した尋問です。
 争いのない点や、大勢に影響のない点は、知らん顔をしています。

 といいますか、主尋問の際に、不必要なところで細かいことを言っていると、裁判官から悪印象をもたれてしまいます。
 裁判所にとっては「尋問内容」と同じくらい「尋問時間」が大切です。

 ちなみに、「語るに落ちる」よう「ひっかけ」の尋問は「誘導尋問」とは言いません。
 弁護士は、そのような尋問をするつもりもありませんし、そんなトレーニングを積んでいません。
 たまに「語るに落ちた」供述をする本人や証人がいますが、尋問者の技術とは関係ありません。


 これに対し「誤導尋問」があります。

 契約書に記載されている内容や登記簿謄本に記載されている内容などの客観的事実に反する前提で尋問をし、あるいは、本人・証人が言っていないことを「言ったと」いうなど、誤った前提で尋問などをすることです。

 これは、だだちに「誤導です」と異議を述べなければなりません。

 「印鑑を押した覚えはない」と本人証人が供述しているのに、「押した印鑑は実印ですか。認め印ですか」と聞くようなもので、このような単純なものなら誰でもわかりますが、巧みに誤導する「古狸」「弁護士」もいますから、自分の側の本人・証人の供述のときには、気をつけなければなりません。

 ちなみに、私は、他の弁護士さんから、悪気なく「先生は、どの教授のゼミですか」と聞かれることが多かったのですが、これはある意味、前提に誤りがある「誤導尋問」です。

 聞く人は「大学を卒業している以上、どこかのゼミに参加して、卒業論文を書いているはずだ」との「思いこみ」があるのでしょうが、これが「大間違い」で、私は、どこのゼミにも参加していませんし、卒業論文も書いていません。

 正しくは、まず「先生はゼミに入ってますか」と聞き、「入っている」と答えた場合に「どの教授のゼミですか」と聞かなければなりません。

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