司法 バックナンバー 1/3
企業内弁護士
「企業内弁護士」(inhouse lawyer=インハウス・ローヤー)という言葉をご存じでしょうか。
日本で「インハウス・ローヤー」といえば、通常は「企業内弁護士」を指します。
行政官庁に所属する弁護士も「インハウス・ローヤー」なのですが、弁護士が、任期付任用制度に基づく公務員として行政官庁に働いていることが多いのではないでしょうか。任期が満了すれば、出身の大規模法律事務所(小さな法律事務所では、任期付公務員に出向させるような余剰人員はいません)に戻ります。
昔から、「企業内弁護士」はおられました。
私の司法修習の同級生(昭和53年修習)に、前職が、某東証一部上場企業の企業の法務課長という方がおられました。
東京大学在学中に司法試験に合格しましたが、司法の道へは進まず、大企業の職員として勤務してきたものの、対外交渉などの際に「弁護士」という肩書きが有用という動機を述べておられた記憶があります。当然、給与等は何分の1かに減額です。
司法修習終了後、法務部長、取締役、常務取締役、代表取締役専務をつとめられました。
最近とみに「企業内弁護士」が増えています。
元来、弁護士は、企業に属するのが嫌な「個人プレーヤー」「一匹狼」の集まりという印象がありましたが(団体に属したいなら、裁判官・検察官になればいいだけです)、時勢がら、そうもいってられないのでしょう。
最初から「企業内弁護士」になったのでは、法廷で「一線」で働く弁護士には慣れない人が多いと思います。
「乏しい証拠」「不利な立場」を「挽回」するのは、やはり、経験がものをいいます。
依頼者からの事情聴取にしても、人それぞれで、依頼者のレベルにあわせ、効率的に聴取できるようになるのは「年期」が必要です。
「企業法務」と言えば「買収防衛」とか「コンプライアンス」とかを思いつきますよね。
社外取締役や顧問弁護士という立場なら、「コンプライアンス」は「華やか」かも知れません。
企業内弁護士で、勤務している企業の「不祥事対応」など「たまつたものではない」でしょう。
「契約書のチェック」「債権回収」くらいならいいですが、若いうちは、雇用関係をめぐるトラブル、クレーマーへの対処などの「汚れ役」がまわってくるかも知れません。
自分の勤務する会社ですから、逃げるわけにもいきません。
偉くなっても、自分の勤務する会社の「不祥事対応」の役回りはまわってきます。
取締役になれば、自分が「代表訴訟」を提起されるかも知れません。
ちなみに、大手サラ金業者P社が、現在、修習中の修習生に「当社の企業内弁護士にならないか」とさそっているようです。
年収は1200万円くらいだそうですが、応募する人はいるんでしょうか。