本文へ移動

司法 バックナンバー 1/3

かつて自分が得た報酬より訴額の小さな事件

弁護士仲間で「かつて自分が得た弁護士報酬より、訴額の小さな事件は、気が進まない」といわれることがあります。

 とくに、交通事故等の損害賠償の場合に言われるようです。

 例えば、ある交通事故訴訟の原告代理人として、着手金・報酬を300万円受け取ったとします。
 およそ、2000万円くらいの損害賠償が認容され、保険会社から支払われた訴訟の着手金と成功報酬に該当します。

 1度、300万円の着手金・報酬を受け取ったことがあると、訴額(損害賠償請求額)が300万円の訴訟はの気乗りがしなくなるという気持ちは、わからなくありません。

 交通事故など損害賠償を請求するときは、和解を見越して、ある程度「ふっかけた」金額で訴訟をします。200万円取れたら「いいところ」と本音では思い、依頼者に「一応請求しておくけど、そんなに期待しないでね」と言っていることが多いでしょう。
 200万円の損害賠償が認容された場合の着手金・報酬の合計は50万円くらいです。

 着手金と成功報酬の合計が50万円の事件と、着手金と成功報酬の合計が300万円の事件は、6倍の差があるわけですが、手数が6倍違うということはあり得ません。

 弁護士の手数としては、あまり異ならないかと思います。

 着手金と成功報酬の合計が300万円の事件といえば、比較的重い後遺障害の等級がはっきり認定されていて、後遺障害の有無や等級などでの争いはなく、むしろ、過失相殺や休業損害、逸失利益算定が主たる争点である場合が多いでしょう。

 これに対し、着手金と成功報酬の合計が50万円の事件ということになると、むち打ちの後遺障害があるかどうかの争い、本音を言えば、原告側の弁護士は、あまり「気が進まない」種類の事件に入ります。

 損保料率機構に後遺障害等級認定申請や、場合によっては異議申立など何かと手数がかかります。
 かえって、着手金と成功報酬の合計が300万円の事件の方が、弁護士にとって「しんどい」かも知れません。

 その昔は、「後遺障害の等級がどの程度か」という争いではなく、そもそも「後遺障害があるのか」という争いの訴訟は、弁護士は敬遠していたものです。
 よほど、親しい依頼者からの要望でない限り、弁護士会の弁護士紹介の制度をお教えして、終わりにする弁護士さんが多かったように思います。

 もっとも、最近は、弁護士大増員のせいか、事件があれば、多少割に合わない事件でも受任するという弁護士さんも増えています。
 ある意味、利用しやすくなったのかも知れません。

TOPへ戻る