司法 バックナンバー 1/3
検察官と懲戒免職
検察庁法に以下の規定があります。
「22条 検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」
「23条
1項 検察官が心身の故障、職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しないときは、検事総長、次長検事及び検事長については、検察官適格審査会の議決及び法務大臣の勧告を経て、検事及び副検事については、検察官適格審査会の議決を経て、その官を免ずることができる。
(以下、略)」
「24条 検事長、検事又は副検事が検察庁の廃止その他の事由に因り剰員となつたときは、法務大臣は、その検事長、検事又は副検事に俸給の半額を給して欠位を待たせることができる。」
「25条 検察官は、前3条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。」
22条所定の定年退官、23条所定の分限退官、24条所定の剰員による欠位を除けば、「その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない」ということですから、検察官には、休職処分はないようです。
前田元検事は、犯罪を認めているので、懲戒免職処分にしても、問題はないかと思います。
さあ、犯人隠蔽容疑罪容疑で勾留されている、前田元検事の元上司はどうなるのでしょうか。
被疑事実は否認しているようです。
起訴されても、同じく被疑事実は否認するでしょう。
全面否認を続け、無罪となる可能性のある現職検察官について、懲戒免職としていいのかという疑問がわきます。
最高検察庁は「国家公務員法には、起訴休職の定めがあり、本俸その他の60%以内が休職中に支給される。だが、検察官には『職務を停止されない』という特則があり、起訴休職は適用されない。それで、今までは起訴前に懲戒免職とされることが多かった」
「刑事訴訟の手続きと懲戒処分の手続きとは別。懲戒処分は人事院が公務員の秩序を維持するためにくだすもので、不服があれば、公平委員会に訴え出ることができる。公平委員会はそれぞれの言い分と証拠を持ち寄って、準司法的な判断をする。さらに公平委員会の判断に不服ならば行政訴訟を提起できる」と説明しています。
起訴となれば、その前日に、懲戒免職処分となる「見込み」です。
懲戒免職ですから、退職金は出ませんし、年金も老齢基礎年金しか出なくなります。
そう考えてみれば、検察官は「危険な職業」ですね。
裁判官は、国会議員からなる弾劾裁判所の罷免手続きがあり、懲戒免職の手続きはありません。
弁護士は、弁護士会による除名処分まで除名されません。むしろ、手続きが遅くなるので「被害」が宅題するという「宿命」があります。
「無罪となったら復職できるのか」という点は、「公平委員会」と「裁判所の行政訴訟」で是正されえます。
ただ、懲戒処分による不利益や逸失利益はどうなるのでしょうか。
「刑事訴訟法で一定の補償がなされる」のは間違いありません。
しかし「国家賠償法の対象になりうる」のでしょうが、法務大臣に、故意または過失がなくては賠償が受けられません。起訴に故意・過失があるととするのは、案外、ハードルは高いです。