本文へ移動

司法 バックナンバー 1/3

証拠の改ざん

検察官が、押収してある証拠のフロッピーディスクを「改ざん」したということで起訴されました。

 私自身は、現在、「あまり」といいますか、「ほとんど」といいますか、刑事事件を扱いませんので事情はよく知りませんが、「想定外」としかいいようがありません。

 民事事件ではどうでしょう。

 民事事件で、証拠の「改ざん」などは、とりたてて「驚く」ことではありません。
 よくあるのは、病院・診療所のカルテの改ざんですね。
 病院・診療所は「訂正」と主張し、患者や遺族は「改ざん」と主張することが通常です。 もっとも、紛争が生じてからは、「訂正」であっても、裁判所に与える心証を考えるとまずいでしょう。

 その昔は、カルテを患者や遺族に交付を要求しても、見たりコピーしたりはできませんでした。
 現在、医療機関の内規などで、患者や遺族の要求で、カルテやCTなどの画像を見ることができるようになっています。

 病院・診療所にやましいところが全くない、つまり、交通事故の治療経過などは、保険会社が患者の同意書をとりつけて、カルテやCTなどの画像を、見たりコピーしたりしていました。
 訴訟になっても同じ事です。
 裁判所が、カルテやCTなどの画像の送付を病院・診療所に求めますが、患者の同意が原則として求められます。

 なお、通常、狭い意味で「改ざん」というのは、本来、記載する権限がある者が、そのデータを書き換える(紙ベース、電子データ)ことをいいます。

 本来、書き換える権限がない者がない者が、契約書などを作成したりメールを送付したりし、あるいは、データを書き換える(紙ベース、電子データ)ことは「偽造」にあたります。
 ただ、これも、広い意味で「改ざん」と呼ばれます。

 検察官が「証拠」を「改ざん」をするくらいだから、弁護士が「証拠」を「改ざん」することがあると思われるかも知れません。

 ただ、弁護士が「証拠」を「改ざん」したとして、懲戒請求を受けた事例は、必ずしも多くありません。

 通常は、弁護士は、依頼者が持参した証拠を「そのまま」出します。それが「改ざん」されたものであることがわかれば証拠として出しません。
 なお、弁護士は、依頼者に不利な証拠を出す義務はありません。文書提出命令という手続きがあることからも、弁護士に、一般的に証拠提出義務がないことがわかります。
 もちろん、弁護士が「改ざん」したり、「改ざん」されたことがわかっていながら証拠として提出することは許されません。

 理論上、どちらかの当事者の、いずれかが「改ざん」としていることは100%間違いないということがあります。
 「改ざん」は依頼者がしていることで、弁護士が「改ざん」してやる必要もありません。 まっとうな弁護士なら、懲戒を受ける危険を冒してまで、「改ざん」はしません。

 ただ、検察官が、証拠を「改ざん」する時代ですから、弁護士が証拠を「改ざん」していても不思議ではありませんが・・
TOPへ戻る