司法 バックナンバー 1/3
ヤメ判・ヤメ検
「ヤメ判」「ヤメ検」という言葉をご存じでしょうか。
「ヤメ判」「ヤメ検」と呼ばれるのは弁護士です。
「ヤメ判」は裁判官経験者である弁護士のことで、「ヤメ検」は検察官経験者である弁護士のことです。
裁判官は、司法試験と司法修習修了試験に合格していますから、退官すれば弁護士になれますし、検察官も、司法試験と司法修習修了試験に合格していますから、退官すれば弁護士になれます。
狭い意味では、定年退官する以前に退官して弁護士になった裁判官経験者を「ヤメ判」、定年退職する以前に退職して弁護士になった検察官経験者を「ヤメ検」と呼びます。
広い意味では、定年退官した元裁判官、定年退職した元検察官を含んで、「ヤメ判」「ヤメ検」と呼びます。
裁判官が定年前に退官する動機は、仕事に関する不満という方は多少おられますが、定年まで転勤生活を送らなければならないことを含む家庭の事情ということが圧倒的に多いといっていいでしょう。
検察官が定年前に退職する動機は、仕事に関する不満という方は多少おられますが、定年まで転勤生活を送らなければならないことを含む家庭の事情、半々という感じでしょうか。
裁判官は、独立して職務を行いますから、上司・同僚との折合いが悪いなどで退官する理由はありません。
他の裁判官から、仕事についての指図は一切受けませんし(合議体の場合のみ、多数決に従わなければなりません)、1、2年もすれば、どちらかが転勤します。
また、仕事についても「判決を書くのが苦痛だ」という裁判官はいますが、最初から、裁判官が向いていない方でしょう。
検察官は、私個人の感想は、あまり「やりたくない」仕事です。
誰だって自分のことは悪く言いたくありません。それを取調べて「自白」させる訳ですから、よほどの正義感の強い人でなければ、好んでしたいという人はいないでしょう。
また、検察官は、上命下服ですから、上司の決済はとらなければなりませんし、上司の命令には従わなければなりません。
仕事があわないとか、上司・同僚との折合いが悪いなどで退職する人もいます。
裁判官は定年まで勤めるのが原則ですが、検察官は中途退職する人の方が多いようです。
裁判官の経歴を有するということが、プラスと考える弁護士はいます。
通常、裁判官の経歴を有するということはプラスですから、ホームページなどには、裁判官の職歴を書く弁護士が多いようです。
私も例外ではありません。
なぜプラスかというと、まず、裁判官の「手の内」を知っているからです。
また、裁判官席から見ていると、書面作成や尋問の、上手な弁護士、下手な弁護士がよくわかります。上手な弁護士の技術を「まねれば」いいことになります。
司法修習を終了したからといって、全員が裁判官になれるわけではなく、私の当時は、成績が上から概ね3分の1(上位160人内)、年齢は任官時概ね30歳以下という「条件」がありましたから、少なくとも研修所での成績は悪くないということです。
マイナスは「商売気」がないことかも知れません。
依頼者にとって「お得」かもしれません。
ですから「裁判官の経歴を有する」とホームページに記載する弁護士が多いのです。
何らかの理由で「マイナスイメージ」を持つ人もいることは間違いありません。ただ「無視しうる」「少数派」と判断していることになります。
検察官の経歴を有するということが、私には、プラスかマイナスかは分かりません。
少なくとも、刑事事件に強いことは間違いありませんので、刑事事件なら圧倒的に有利でしょう。
ただ、刑事事件を、主たる「収入源」にしている弁護士さんは、必ずしも多くありません。
逆に、民事事件の経験の不足が問題となるかも知れません。
ホームページなどに、検察官の職歴を書く弁護士さんは多いです。
やはり、自信を持っているのでしょう。
なお、定年退官後の裁判官・検察官出身の弁護士の不祥事が目立ちます。
まず、高齢(裁判官65歳、検察官63歳)が原因でしょう。
また、「依頼者」の「扱い」になれていないのも原因ですね。
さらに、本来なら、定年退官すれば、退職金や年金で仕事をしなくても、生活できます。
弁護士となるにしても、大きい事務所の「客員弁護士」として隠居仕事をしていればいいのです。
年齢、弁護士としての経験年齢の少なさにもかかわらず、仕事をしなければならないということは、何らかの理由で、それだけお金に困っている可能性があります。
お金に困っていれば、当然、不祥事を起こす確率は高くなります。