司法 バックナンバー 1/3
事務取扱
例の現職検事による、証拠のフロッピ改ざん事件ですが、最高検察庁検事が捜査しています。
検察官の捜査に管轄の制限はないらしいのですが、大阪地方裁判所に起訴しようと思うと、大阪地方検察庁検事の肩書きが必要です。
厳密にいえば「大阪地方検察庁検事」に限らず、「大阪地方検察庁検事事務取扱検事」であればいいので、最高検察庁検事が「大阪地方検察庁検事事務取扱検事」として起訴するようです。
検察庁は、結構「事務取扱」がお好きです。
例えば、大阪地方検察庁の事件の起訴や公判立会は、本来、大阪地方検察庁検事がしなければなりません。
ただ、大阪区検察庁副検事が、大阪地方検察庁に起訴する例はよくあります。
大阪地方検察庁の検察官は多くありません。
例えば、自己使用の覚せい剤取締法違反、窃盗などの簡単な事案でも、禁固・懲役以上の刑を求刑しようという場合、大阪地方検察庁に起訴しなければなりません。
大阪地方検察庁の検察官は多くなく、実際、自己使用の覚せい剤取締法違反、窃盗などの簡単な事案は、大阪地方検察庁の検察官ではなく、大阪区検察庁副検事が捜査していることが多く、その場合、「大阪地方検察庁検事事務取扱副検事」として、副検事が起訴します。
副検事は、司法試験に合格しているわけではありません。検察事務官で優秀な人が副検事として任官します。
簡易裁判所判事と同じですね。書記官で優秀な人が簡易裁判所判事として任官します。
大阪地方検察庁の検察官は不足していますから、大阪区検察庁副検事が、「大阪地方検察庁検事事務取扱副検事」として、大阪地方検察庁に起訴します。
公判は、大阪地方検察庁の検察官が担当します。
さらに、区検察庁では、これらの検察官の仕事を、法的知識が豊かで捜査経験も長い一定の検察事務官が行っています。
その検察事務官は、検察官事務取扱検察事務官と呼ばれています。
検察庁法36条に「法務大臣は、当分の間、検察官が足りないため必要と認めるときは、区検察庁の検察事務官にその庁の検察官の事務を取り扱わせることができる」となっていますから(「当分の間」とされていますが、昭和22年から現在まで続いています)、区検察庁の事件については、検察事務官でありながら検察官と同じ権限を持ち検察官としての仕事、つまり、犯人を取調べるなどして、起訴するか不起訴にするかを決定し、その事件を公判請求すれば法廷に出向いて公判立会もできることになっています。
弁護士が、検察官事務取扱検察事務官の訴状や取調調書を見る機会はあまりありません。
よく見かけるのは、交通事故で、検察官事務取扱検察事務官が捜査をして、罰金を求刑するときです。
交通事故の民事訴訟で、調書が証拠として提出されます。
まあ、時々「笑わせて」くれます。
私の経験では、一旦停止したはずの軽四自動車が、3メートルも走っていないうちに、時速20キロメートルに達し、バイクをはねたという被疑者の調書がありました。
一旦停止しているはずないですね。
被疑者が「一旦停止した」といったので「一旦停止した」という調書になっているだけで、誰が考えても「嘘」なのですが、「嘘」であると認めさせることができなかったのでしょう。
なお、裁判所にも「事務取扱」があります。
よくあるのは、判事補や、なりたての判事で。高等裁判所判事と任命する経験年齢に達していない場合、地方裁判所判事補・判事に任命をしておいて、高等裁判所の裁判官の仕事をさせることがあります。。
裁判所法19条に「高等裁判所は、裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる」という条文の利用です。
大阪高等裁判所裁判官事務取扱大阪地方裁判所判事補・判事ということになります。
簡易裁判所判事が、地方裁判所裁判官として職務をしたり、書記官・事務官が、簡易裁判所判事としての職務を行うということはありません。