司法 バックナンバー 1/3
司法試験の受験回数の制限
私の受験した年(昭和52年)の司法試験合格者の平均年齢は28.9歳でした。
通常22歳から受験する人が多いので、平均年齢は28.9歳ということから、受験回数の制限がないということがわかりますね。
制度が変わりました。
改正された司法試験法4条には、以下の定めがあります。
「1項 司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において、3回の範囲内で受けることができる。
一 法科大学院(学校教育法 (昭和22年法律第26号)第99条2項 に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう)の課程(次項において「法科大学院課程」という)を修了した者 その修了の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間
二 司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間
2項 前項の規定により司法試験を受けた者は、その受験に係る受験資格(同項各号に規定する法科大学院課程の修了又は司法試験予備試験の合格をいう。以下この項において同じ)に対応する受験期間(前項各号に定める期間をいう。以下この項において同じ)においては、他の受験資格に基づいて司法試験を受けることはできない。前項の規定により最後に司法試験を受けた日後の最初の4月1日から2年を経過するまでの期間については、その受験に係る受験資格に対応する受験期間が経過した後であつても、同様とする。」
わかりにくいですね。
「法務省のホームページによる解説」によると、以下のとおりです。
「 『5年で3回』の受験制限の基礎となった当初の受験資格に基づく受験は認められません(新法第4条第1項)。
ただし,当初の受験資格に基づく5年の受験期間を経過し,かつ,最後に新司法試験を受けた日後の最初の4月1日から2年を経過した場合には,当初の受験資格とは別の受験資格(法科大学院課程修了あるいは予備試験合格)に基づいて,新たに新司法試験を受験することができます(同条第2項)。この場合も,新たな受験資格について,5年で3回という制限の範囲内であることが必要です(同条第1項)」
たとえば、法科大学院を卒業し、司法試験を毎年受験し、3回不合格となれば、あと2年は受験できません、ただ、新たに法科大学院を卒業し(入学して卒業)、あるい司法試験予備試験に合格すれば、最初の法科大学院卒業後、6年目から再度受験できますという解釈になると思います。
過去に「優先合格枠制度」がありました。「丙案」と呼ばれていました。
平成8年の司法試験から、論文式試験合格者の約7分の2を受験期間3年以内の者だけから決定する制度が開始され、平成11年より約9分の2になり、平成16年に廃止されています。
公務員試験と異なり、司法試験に定年制はなじみません。
現実に実施されたことはありません。
ただ「採用側」が、比較的若い人を司法試験合格者としたいという意思は一貫しているようです。
裁判所と検察庁は、あまり歳をとっている人の採用には消極的です。
例えば、期が上で年齢が下の裁判官と、期が下で年齢が上の裁判官とを、同じ合議体に入れたくはないのです。
ある意味「丙案」は合理的だったのかも知れません。
裁判所と検察庁には、合格者が少なかった時代には(平成8年の司法試験の合格者数は768名)、司法試験を何年も受続けいる人は多い、比較的若い人を裁判官や検察官としてとりたいという動機はあったのでしょう。
ただ、2000名まで司法試験の合格者が増えてしまえば、比較的若い人が司法試験に合格することが容易になり、裁判所と検察庁が、若い人を裁判官や検察官としてとることは容易になりました。
さらに、弁護士業界が「構造不況業種」と呼ばれている昨今の時勢を考えると、裁判所と検察庁が、若く優秀な人を裁判官や検察官としてとることは難しくはないでしょう。
ということで、問題は弁護士志望者ですね。
基本的に、弁護士は年齢は問いません。
法科大学院を卒業した人に、無制限の受験の機会を与えることに、大きな弊害はなさそうです。
「三振バッターアウト」とばかりに、強制退場させられる人は気の毒です。
確かに、3回不合格であった受験生が、4回目、5回目に合格するという確率は、1回目の受験生に比べて劣ることは否めないでしょう。
でも、絶対といっていいほど「0」ではありえません。
なによりも、我々の時代、少し後の時代に、3回だけの受験で合格した人とは少ないでしょう。
でも、3回以上の受験で合格している人に活躍している人が多いのも事実です。
その人たちを切り捨てるというのは、どうでしょうか。
何か3回の受験制限でメリットはあるのでしょうか。
司法試験の合格率は分母が小さくなりますからあがります。
制限をしないと、他の条件が同じであれば、合格率は、毎年毎年さがる一方となります。
また、あきらめきれずに、人生を棒に振ってしまうという人が出るという意見はあるでしょうが「自己責任」ですね。「小さな親切大きなお世話」です。
それくらいで受験回数の制限の必要はなさそうですね。