司法 バックナンバー 1/3
死亡者の年金と詐欺
1つには、家族や地域のつながりが希薄になったことによる単純なものです。
現在でも、小さい町村へ行けば、どこに誰が住んでいて、どういう家族構成か、他の所に行った元住民がどこに住んで、どんな家族構成かまで、町村民ならわかっているというところがあります。
そんなところで「お年寄りが生きているか死んでいるかわからない」ということはありえません。
都会になると「隣は何をする人ぞ」ということになりますね。
親戚と音信不通であれば、「お年寄りが生きているか死んでいるかわからない」ということになります。
年金受給とかがからまなければ、詐欺だとかいう問題は生じません。
あと1つは、年金の不正受給がからんだ詐欺事件です。
むかしは、年金受給には、すべての年金に現況届の提出が必要でした。
今でも、加給年金額等が加算されている場合や障害年金受給者には、生計維持の確認(加給年金額等)、傷害の程度の確認(障害年金受給者)のための現況届けは必要です。
老齢年金は、現在、生存していることを証するため、年1回、住民票などを添付して現況届けが必要でした。
平成18年10月から、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を活用して、年金受給者の現況確認が実施されています。
ごく少数の例外の自治体を除き、老齢年金のみの場合、現況届けは要りません。
年金受給者の死亡時に、遺族などが市区町村に提出する戸籍の死亡届が提出されます。
死亡届とは別に「年金受給権者死亡届」の提出が必要ですが、なくても、死亡届さえ出ていれば、チェックできます。
わざと、家族が死亡届を出さずに、年金が振込み続けられるようにしておいて、年金の振り込まれる預金口座から、キャッシュカードなどを利用してお金をおろすという例もあるようです。
こんな「罰当たり」のことをする人などいないという考えは甘いようで、詐欺をはたらく人もいます。
「死亡届が提出されていない」=「生存している」=「年金受給権がある」と自動的に判断されるという盲点をついたものです。
もちろん詐欺罪ですから、重い処罰が加えられるべきでしょう。
なお、住基ネットにより、高齢者で医療・介護保険を使わない人をチェックすれば、死んでいるのに届出が出されていない人がわかります。
もちろん、本当に、高齢者で医療・介護保険を使っていない人については「失礼致しました」と謝ることになります。