トリビア バックナンバー 1/2
ストロー効果
「ストロー現象」「ストロー効果」という言葉をご存じでしょうか。
「ストロー効果」とは、コップの水がストローによって吸い上げられることに例えて、便利な交通体系(ストロー)が整備されると、それにより活性化を期待していた地方圏(コップ)から大都市圏(口)へと経済活動(水)が流出し、地方圏が逆に衰退してしまうことを表した言葉です。
仮に新幹線が延伸されたとします。
もちろん、新幹線ができれば交通が便利になるわけですから、観光地を有する地方自治体は、観光客が多くくるということを期待します。
地域が活性化すると期待しがちです。
しかし、地元住民にとってはどうでしょう。
東北新幹線や北陸新幹線の延伸により、地元住民が東京に行きやすくなります。
東京へいけば、以前であれば海外でなければ入手困難な品物はそろいますし、ディズニーランドなどの娯楽施設があります。
東京は、さまざまな娯楽・買い物の面ではもはや一大観光地です。
たとえ東京がいくら魅力的であっても、飛行機で「ちょっと」出かけるということは考えにくかったのです。
しかし、新幹線が延伸されれば、東京に「ちょっと」でかけることが可能になります。
九州新幹線の整備に伴う福岡の存在価値は上がるでしょう。
やはり、「ちょっと」福岡に出かけることも可能になります。
「ちょっと」「無理をすれば」、大阪も視野に入ってきます。
ビジネスの面では、支店や事務所を地方都市に置いていた企業の中には、新幹線延伸を契機に、地方都市の支店や事業所を閉鎖し、出張で従来の業務をカバーしようとする動きが出てくることも考えられます。
私の出身地の和歌山市などは、大阪に近すぎて買物などに「ちょっと」でかける人が多く、もともとJRと南海電車で1時間、高速道路の整備などによって、ストロー効果による経済活動の衰退が著しく、商店街はシャッター通りになり、一時期40万人をこえていた人口が37万人にまで減少しています。
また、白浜などの観光地も、高速道路の整備により、完全に大阪からの「日帰り圏内」になりました。
従前なら、宿泊してくれた温泉客が、高速道路の整備の結果、朝出発し、観光や日帰り入浴を楽しみ、夜帰ってしまうという現象も起きています。
日帰りで帰られると、地元にお金が落ちませんから、観光業にたずさわっている人たちは悲鳴を上げています。