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世襲

「世襲議員」が話題になっていますね

 裁判官・検察官・弁護士の法曹三者はどうでしょう。

 その昔は「現代の科挙」ともいわれた、年間500人しか合格しない司法試験に合格しなければならなかったのですから、そう簡単に「世襲」はできません。

 もちろん、親の経済状態や生活レベルよって受けられる教育が違い、それが最終学歴の差となることは間違いありません。
 また、受験浪人時代が長く続いて司法試験に合格する人が多いですから、親に資力のない人は、受験浪人を続けることも難しいことも事実です。

 ただ、日本全国で年間500人でしたから、本人に能力がなければ、到底合格はできません。
 頭の善し悪しも「遺伝」しますが、それは本人の天賦の能力でしょう。どのような経済政策(極端な話、例えば、相続税100%を徴収する。一定年齢以降は親からの資金援助を一切認めず、違反したときは処罰するなど)をとっても「遺伝」の「防ぎよう」はありません。

 司法試験は、医師、歯科医師などの国家試験とは基本的にレベルが違いました。
 医師、歯科医師は、現在でも、子を「裏口」「準裏口」のある私立大学に入学させ、国家試験ための勉強をさせれば、国家試験に合格することは不可能ではないのと大きな違いがあります。


 裁判官・検察官・弁護士の法曹三者にも、親が法曹三者だったという人が、ある程度います。

 ただ、必ずしも数は多くなく、親の職業は多種多様でした。
 民間会社の役員クラス、高級公務員という範囲まで広げてしまうと、その数は結構な数に上ります。医師・歯科医師が父親という方も結構いました。
 逆に、極端な話をすれば、私の司法研修所の同級生には、親がブルーカラーという人も結構いました。

 弁護士が、息子を弁護士にしようとする人は結構いたのですが、ほとんどの場合挫折し、息子さんは、合格見込みのない長期浪人生活を余儀なくされている人がいます。現実に使い物になりません。

 逆に、確実なのは、娘を、法曹三者や司法修習生と結婚させるという方法で、これは、かなりの数に上ります。
 法曹界も、広いようで狭いですから、他の人の悪口は、めったなことでは言えません。
 息子や娘が法曹三者になっていれば、姓が同じですから(結婚して、姓が変わっても、従前の姓で仕事をする人がほとんどです)、注意することもできるのですが、配偶者の親が法曹三者ということになると、姓が違う場合がほとんどですから、うっかり悪口を言って、後からえらい目にあうこともあります。私自身も、そんな経験があります。

 ただ、このところの司法試験合格者の劇的増加により(私の受験当時の4.6倍になりました)、法曹三者の親が、自分の息子や娘を司法試験に合格させることが容易になり、結構、二代目が増えてきました。
 法曹増員反対を叫ぶ人の中には、子を法曹にさせたいがため、司法試験合格者大幅増に賛成した有力弁護士がいるという人さえいます。

 二代目の弁護士に、経営基盤を継げるのかという点ですが、大きな事務所なら、しっかりした「番頭格」がいますから、その事務所の構成員として高収入を得ることも可能です。
 ただ、小規模事務所となると、子の能力によりますね。子に能力がなければ、そう簡単に、顧問先などの経営基盤は引継げません。
 親である弁護士が老齢になり、仕事ができなくなると、子の弁護士ではなくて、他の法律事務所に顧問を依頼することも結構あります。

 ちなみに「世襲」しやすい職業は、政治家、経営者(大会社含めて)、医師です。
 逆に、「世襲」しにくい職業は、法曹三者と高級官僚です。
 法曹三者は既述の通りです。
 高級官僚は、浪人や留年は2年まで、難関の大学を卒業し、上級職の国家公務員試験に合格しないとなれません。私の同級生で、高級官僚の道を選択した人の親が高級官僚であるという例はありませんでした。
 高級官僚になった友人に聞くと「何もわかっていない人(国会議員のことです)が、自分の上にくるのだから、たまったものではない」「子供は公務員には絶対しない」といっている人がいます。

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