債務(借金)問題
債務・借金
期限の利益
もちろん「一括」して返済する必要はなく、定められた期日に支払えばよいのです。
これを「期限の利益」といいます。
ただ、約款を読めば明らかなのですが、一定期間・金額以上、支払いをしなかったときは、「期限の利益」を失い、「残額を一括して支払う」という「過怠約款」が入っています。
「一部も分割金も払えないのに、残額全額を払えというのは無茶だ」というお考えは、もっともかもしれません。
しかし、過怠約款には十分な合理性があります。
過怠約款がないと仮定しましょう。
ちゃんと約束通り支払おうとするインセンティブ(動機付け)が小さくなりますね。
いくら遅れても「後から遅延損害金をつけて支払えばいいや」ということになってしまいます。
訴訟と強制執行を考えてみましょう。
訴訟で「○年○月○日に金○○円を支払え」ならまだしも「遅延損害金」が、ずらっと並んでいたのでは、ややこしくて仕方がありません。
強制執行も、「ばらばら」に申立てる方も、申立てられる方もかないません。「遅延損害金」の計算も面倒です。
強制執行をする方も、される方も、裁判所も、執行官も、弁護士も、みんな迷惑です。
みんなにとって「1回きり」が最も好ましいことになります。債務者としても、面倒でしょう。
また、主債務者が支払えないとして連帯保証人に請求するとします。連帯保証人が一括して支払える場合があります。
連帯保証人は、借りた本人が遅滞すれば、連帯保証人が一度に支払わなければならないのですから、借りた本人が人が、支払を遅滞する前に、連帯保証人に、各回の支払いを「助けて欲しい」と懇願することも期待できます。
ちなみに、建前は、連帯保証人も一括払いとなりますが、払ってくれそうな信用のある連帯保証人なら、話合いの結果、従前の支払い条件で了承という債権者が通常です。
なお、業者の貸金や、割賦販売の場合、「過怠約款の付け忘れ」は全くといっていいほどありません。
問題なのは、個人が書いた、個人間の貸借です。定型用紙を利用すれば、ちゃんと記載されています。
過怠約款の入っていない分割払いは、弁護士が依頼されたとき、手数がかかり、貸主にも借主にも不利益です。
例えば「借主が分割金の支払いを2回分怠ったときは、当然に期限の利益を失い、借主は貸主に対して、残額を一括して支払わなければならない」と入れておくように、強くお勧めいたします。
話は変わりますが、最高裁判所の貸金業法の判例では、「任意性」がない理由として、「過怠約款の存在」をあげています。法的には、これが「正解」でしょう。しかし、実務的な観点からいうと、相談者・依頼者に「過怠約款」をあげる人に、お目にかかったことはありません。
ほとんどが「約束どおりに支払わなければブラックリストにのる」から、弁護士に、債務整理の依頼はせず、親せきに頼るという人が多いです。
むしろ、ブラックリストのあり方について、検討すべきではないでしょうか。