債務(借金)問題
債務・借金
たかが借金で自殺しますか?
まず、債務がふくらんだ経緯について、「あの時こうしていればよかった」「あの時こんなことはすべきではなかった」と後悔する気持ちは分かるのですが、債務整理の手続きが終了するまでは、とりあえず、あまり考えないことをお勧めいたします。後悔しても過去には戻れません。
重要なのはこれからどのようにすれば、最悪の事態をまぬがれ、平穏な生活を回復するかであって、過去のことを「くよくよ」考えるのは、とりあえず、後まわしにしましょう。
借金が返済しきれないとわかったとき、自殺を考える人がいます。犯罪に手を染める人もいます。いわゆるヤミ金から借りようとする人がいます。いずれも最悪です。
「返済するお金がないときどうたらよいのか」という問題の解決をするとき、自殺まで考えそうな深刻に悩むタイプの人の場合には、私は「ご自分で、どのようにしたら、お金が入るか、馬鹿馬鹿しいというものも含めすべて、あらゆる可能性をあげてみて下さい」「そのうち、実現可能で、いちばん『まし』なものを選びませんか」という問いかけをすることがあります。
いわゆる「消去法」です。
「超幸運系」「犯罪系」「その他」に分類してみましょう。
超幸運系
・ 天からお金がふってくる
・ 歩いていると道ばたにお札が落ちている
・ 宝くじで1等が当たる
・ 金持ちのきわめて遠い親戚が急死して相続財産が入る
犯罪系
・ 親戚・友人に保険をかけて殺す
・ 火災保険に入っている自宅に火をつける
・ 銀行強盗をする
・ 盗みに入る
・ 寸借詐欺をする
・ 恐喝をする
・ 職場の金を横領する
・ 賄賂(公務員の場合)を要求する
その他
・ ヤミ金から借りる
・ 夜逃げをする
・ 開き直る
・ 自殺する
・ 弁護士に依頼する
超幸運系は「こんなことありえないよ」と最初に消去されるはずです。
犯罪系は「そんな馬鹿な」と思われるかもしれませんが、案外、借金返済のため犯罪をする人は多いのです。
犯罪系については、例えば保険金殺人は原則は死刑よくて無期懲役刑と重い処罰になります。また、 一般的に、お金を得ることが目的のが動機の犯罪は、動機に情状酌量の余地なしとして、厳しく罰せられます。
犯罪系は、絶対してはならないものとして、選択肢から消去して下さい。
なお、クレジットのキャッシング枠が限度いっぱいのため、ショッピング枠を利用して、貴金属・高価な電化製品・金券などにかえて、質屋や金券ショップに得ってお金にするのは詐欺罪という立派な(?)犯罪です。すぐに処罰されないにしても、大がかりな詐欺団が一斉逮捕されたときに巻添えを食らうことがありますし、仮に、法的整理に入ろうとするとき致命的な汚点となります。
そこで「超幸運系」と「犯罪系」を除いて検討しましょう。
まず、ヤミ金から借りる。これは犯罪にはなりません。
しかし、ヤミ金は、時間・場所など問わず、例えば、深夜・早朝など、自宅ドアなどに「借金返せ」というビラを毎日のように貼りつけるなど、職場への執拗な電話など、苛酷な取立てをしますから、へたをすると八尾市の夫婦のように自殺にすら追い込まれ兼ねない危険をはらんでいます。
これも選択肢から外して下さい。
夜逃げをする。これも犯罪にはなりません。
夜逃げをするとします。住民票を移せば別ですが、住民票をそのままにして、他市町村に逃げてしまえば、債権者には新住所は通常わかりません。住民票を移転すれば、債権者にはどこに移転したかわかってしまいます(業者は、顧問弁護士などに依頼して、定期的に行方不明者の住民票が移っていないかどうかを点検しています)。
しかし、就学年齢の子供をお持ちの家族は、住民票がなければ学校へ通うことも難しくなりますし(便宜をはかってくれる市町村もあるようです)、健康保険も使えなくなります。
個人的には、夜逃げは悪くない選択肢だと思います。少なくとも、自殺よりはるかに「まし」です。但し、あなたが、小規模なりとも会社の代表者をしておられるなら、弁護士に委任するなどの後始末をつけてから、新しい携帯電話をもって夜逃げして下さい。弁護士には「守秘義務」がありますから、夜逃げ先は誰にもいいません。
家族連れの場合は家族全員で、単身者の場合は単身で夜逃げをして下さい。
ただ、親戚に迷惑がかからないようにして下さい。
悪質な債権者は、「所在調査」と称して、親戚から金を回収しようとします。
これに対抗するため、事前に、最寄りの警察に「捜索願い」を提出し、日時と受付番号だけ記録しておくようにアドバイスして下さい。
ほとぼりのさめた頃、大体5、6年過ぎを目途に戻るのがよいでしょう。債権者、特に業者は、不良債権として償却済みでしょうし、追求する気力すらなくなっているのが普通です。
開き直る。これも犯罪にはなりません。
何億、何十億の借金を背負っている債務者が、高価なスーツ姿で「返せないものは返せません。逃げも隠れもしません。強制執行でも何でも好きにして下さい」と開き直るシーンをテレビで見たことありませんか。
小額の負債をかかえる個人でも、借金取りに対し、開き直って「返せるものなら返したいのですが、何もありません。強制執行されても仕方ありません」とつっぱねる債務者は、意外に思われるかもしれませんが、結構おられます。
債権者にとっては、これが一番嫌なパターンです。
なお、テレビ・洗濯機・エアコンなど家財道具などの差押はできません。映画やテレビの、家財道具に差押の赤紙を貼っているシーンは、あくまでもフィクションです。
開き直るだけの度胸のある人は、弁護士費用もいりませんし、ベストの選択かもしれません。もっとも、 一生、自分名義のまとまった財産はもてないというデメリットもありますし、子など相続人予定者に、自分が死んだときは相続放棄するようにと伝えておいたほうがいいでしょう。
自殺をする。これも犯罪になりません。
しかし、犯罪に次いで悪い選択です。
身よりも何もない人はいないでしょう。
親・子・配偶者など近い親戚に自殺をされたらどう思いますか。自分が、近い親戚に自殺をされるのが嫌ならやめて下さい。
そもそも、不治の病に冒され、毎日毎日が苦痛の生活というのなら別ですが、借金ごときで自殺するのは「馬鹿らしい」ことです。
連帯保証人になってもらった人にしても、自殺されたのでは、自分が自殺の一端となってしまった、自分にも自殺の責任があるかもしれないと考えてしまう可能性があります。
どうしても借金取りが来る苦痛から逃げたいのなら「夜逃げ」をお勧めします。
前記のとおり、住民票さえ移さなければ、借金取りは追いかけて来られません。
弁護士に相談する。これがベストです。
病気になれば医者にかかる。これと同じことです。
法的な債務整理が可能であれば、弁護士が最も適切な方法をアドバイスしてもらえます。
ただ、例えば、破産をしてから7年以内に、任意整理ができないような大きな借金をつくった場合など、法的に手の打ちようのない事案もあります。
ただ、上手な夜逃げの仕方くらいは普通アドバイスがもらえると思います。弁護士は、一般の債権について、債権者の代理人として仕事をすることも多いですから、自分がやられたら困る方法をアドバイスすればいいわけです。