債務(借金)問題
債務・借金
破産事件の記録の閲覧
では、破産事件の記録はどうでしょう。
破産法11条は、以下のとおり定めています。
1 利害関係人は、裁判所書記官に対し、この法律の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件の閲覧を請求することができる。
2 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
4 前3項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める命令、保全処分又は裁判のいずれかがあるまでの間は、前三項の規定による請求をすることができない。ただし、当該者が破産手続開始の申立人である場合は、この限りでない。
一 債務者以外の利害関係人
24条1項の規定による中止の命令、第25条2項に規定する包括的禁止命令、28条1項の規定による保全処分、91条2項に規定する保全管理命令、171条1項の規定による保全処分又は破産手続開始の申立てについての裁判
二 債務者 破産手続開始の申立てに関する口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定の裁判又は前号に定める命令、保全処分若しくは裁判
また、破産法12条は、以下のとおり定めています。
1 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という)を行うことにより、破産財団の管理又は換価に著しい支障を生ずるおそれがある部分があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した破産管財人又は保全管理人の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者に限ることができる。
一 第36条、第40条1項ただし書、同条2項において準用する同条第1項ただし書き、第78条2項、第84条、又は第93条1項ただし書の許可を得るために裁判所に提出された文書等
二 257条2項の規定による報告に係る文書等
2 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者を除く)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。
3 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、破産裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。
4 第1項の申立てを却下する決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
というと難しいですよね。
要点は、
1 利害関係人(一般人ではダメです)は、裁判所書記官に対し、破産法に基づき、裁判所に提出され、または、裁判所が作成した文書その他の物件の閲覧を請求することができます。
2 さらに、文書等の謄写、その正本、謄本もしくは抄本の交付、または、事件に関する事項の証明書の交付を請求することもできます。
もっとも、破産事件の場合、その記録の閲覧、謄写を無制限に認めることによって事件処理等に支障が生じることも考えられます。そこで、以下のような制限が設けられています。
(時間的制限)
破産申立人を除く債務者以外の利害関係人は、強制執行等の中止命令、包括的禁止命令、債務者の財産に関する保全処分、保全管理命令、否認権のための保全処分、または、破産申立についての裁判のいずれかがなされるまでの間は、記録の閲覧、謄写を請求することができません。
また、破産申立人を除く債務者は、破産申立に関する口頭弁論もしくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定の裁判、または、上記の命令、保全処分もしくは裁判のいずれかがなされるまでの間は、記録の閲覧、謄写を請求できません
(支障部分の閲覧等の制限)
一定の文書等について、利害関係人がその閲覧、謄写等を行うことにより、債務者の財産または破産財団の管理または換価に著しい支障を生ずるおそれがある部分があることにつき疎明がなされた場合には、その文書等を提出した破産管財人または保全管理人の申立により、裁判所は、その部分について閲覧等を請求することができる者を、その申立をした破産管財人または保全管理人に限定することができます。
どうして、このように「ややこしい」規定になっているかというと、「破産は生もの」と言う考えからです。また、基本的に、公開が原則である「訴訟事件」ではなく、公開の必要性が必ずしもない「非訟事件」ということもあります。
まず、破産債権者が、破産により自分が大損をくらったから「そのことを、公にしたくない」と思ったとします。
しかし、破産債権者であれば、他の債権者が「どさくさまぎれに」、破産債務者から「優先弁済を受けた」、あるいは、そういう上品なものでなく「どざくさまぎれに」「商品をかっぱらっていった」という情報があれば、破産管財人にとって貴重です。
倒産が近い債権者から、直前に回収すれば、破産管財人に返却の必要があります。
いわば「たれこみ」で、破産財団がふくらむ可能性があります。
ですから、破産債権者が、他の破産債権者の債権額を知ろうとすることは非常に有益です。
ですから、破産債権者が、自分が大損をくらったから「そのことを、公にしたくない」と思っても無理です。
あと、訴訟を提起するかどうか、破産管財人と裁判所が打ち合わせるとします。
破産記録には、否認権を行使して訴訟をし、財団をふやすべき有利な資料、不利な資料、破産管財人の考え、有利な判例、不利な判例など、いわば、管財人の「手の内」がすべて綴られています。
これを、否認権を行使されるべき者が見たら、破産管財人の手の内がわかってしまいます。証拠隠滅をはかるかも知れません。
ということで、債権者等利害関係人であるからといって、記録の閲覧をするわけには行きません。
次に、破産財団に属する不動産などの物件の、買い受け申込者や購入希望価格なども記録に綴られていることがあります。他の買受け申込人の購入希望価格が漏れたのでは、正当な競争入札ができません。
一般債権者の代理人として破産記録を閲覧しようとすると、あまり「中身のない」記録を見せられることがあります。
やむを得ませんね。