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遺言・相続問題

特別縁故者と財産管理人

 相続人がいない場合や法定相続人が全員相続放棄をしてしまった場合は、遺産はどうなるのでしょうか。
 
 プラスの財産があるのに、法定相続人が全員相続放棄をするというのは珍しいでしょう。
 
 マイナスの財産がいくらあるかわからないから、安全策をとって法定相続人全員が相続放棄をする場合などに生じます。
 
 また、親など直系尊属、配偶者、子や孫など直系卑属、兄弟やその子孫がいない人が希にいます。
 
 現在、弁護士をされているかわかりませんが、弁護士さんで親類縁者全くなしという人がいました。弁護士さんですから、間違いないでしょう。本人なら、ときどき、法定相続人がいるのにいないと勘違いしている人がいます。
相続人がいない場合などには、相続財産は最終的には国庫に帰属することになります。
 
 しかし、必ずしも常に国のものになるわけではありません。
 
 まず、相続人の存否が不明の場合には、相続財産管理人が家庭裁判所により選任されることになります。
 
 通常は弁護士が選任されます。
 
 財産の散逸をふせがなければなりません。

 相続財産管理人は、裁判所が職権で行うべきものではなく、必ず申立によります。
 
 相続財産管理人をつけるほどの財産や負債がない人は、誰も何もしません。
 
 相続財産管理人の選任申立をするのは、誰でしょう。
財産がありながら、最初から、天涯孤独の人はあまり多くありません。
 
 相続人が全員相続放棄した場合が通常です。
法定相続人だった人は相続放棄によって遺産を相続することがなくなります。
 
 しかし、民法940条には「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」とあります。
 
 「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」というのは、委任のような「善良な管理者の注意義務」とは異なり、要求される注意義務は軽いです。ただ、放っておけばいいというわけではありません。
 
 相続放棄により、相続しなくなったからと言って、遺産の管理義務まで無くなるわけではありません。
うっとうしいですね。
 
 ですから、負債は大きいが、それなりの財産がある場合、相続財産管理人の選任申立をするのが普通です。
いつまでも、財産管理をするのは面倒です。また、相続財産に手をつけられたと思われるのは嫌です。
 
 ただ、相続放棄した法定相続人の誰も相続財産の管理人選任の申立をしない場合は、債権者が相続財産の管理人選任の申立をすることになります。
 
 財産の散逸の防止です。
 
 また、特別縁故者が、相続財産管理人の申立をすることがあります。
 
 もちろん相続財産狙いです。
 
 相続財産管理人が、換価すべき財産を支払い、負債の弁済の手続きをしますが、財産が残らなければ、そこで終了です。
 
 結局、財産が残らず、相続財産管理人の追加報酬が支払われ、債権者には0というケースが多いです。破産と同じですね。
 
 破産管財人、後見人、相続財産管理人は、事件がない若手(若手で事件のある弁護士は、破産管財のみします)の貴重な収入源となっています。
 
 財産が残れば、相続財産管理人が相続人捜索公告手続をします。その公告期間の満了後3ヶ月以内に「特別縁故者による分与の申立」手続をします。
 
 民法958条に「前条(期間内に相続人としての権利を主張する者がないとき)の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」とされています。
 
 「被相続人と生計を同じくしていた者」とは内縁の夫婦、事実上の養親や養子などです。
 「被相続人の療養看護に努めた者」とは、法定相続人ではありませんが遠い親戚、職場の元同僚などです。家政婦や看護師のような、療養看護をするかわりに相当の報酬を得ていた人については難しいです。
 
 「その他被相続人と特別の縁故があった者」は、事例はありますが、特殊な事例です。
 
 遺言書を書いてもらえればそれにこしたことはありません。
 
 ただ、同居して生計を一にしていた人はまず大丈夫でしょう。それ以外は「ダメ元」で試みる価値はあるかと思います。
 
 うまくいかなくても、損をするのは、弁護士に支払う着手金と実費です。
 
 大した金額にはなりません。
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