遺言・相続問題
生命保険は特別受益にあたるか
生命保険金を原則として特別受益に該当しないと扱われています。もっとも、相続人間の不公平が到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益に準じて扱うとされています(最高裁判所・平成16年10月29日判決)。
例えば、夫婦が生活費の中から、こつこつとかけてきた生命保険の保険金を妻が受け取り、また、妻が遺言でも遺留分を侵害する相続財産をもらっている場合、生命保険を特別利益として計算する必要はないでしょう。いずれ、妻が亡くなれば、子が相続します。
ですから、遺言書がない場合に遺産分割するあたり、妻が受取った生命保険は、特別受益に該当しないと解されます。
ただ、相続人の1人が、遺言者から、全部もらうとの遺言書を書いてもらったうえ、遺留分減殺逃れのため、一時払い養老保険に入らせて、自分を受取人にしておくことがあります。
一時払い終身保険(年齢や健康に関係なく入れます。日本生命なら3歳~90歳が加入可能です。平成29年6月時点)に、自分を受取人として、1000万円程度の保険金の契約に加入させたとします。
一時払い保険料は、ほぼ1000万円です。
保険金は相続財産ではなく保険金となります。
保険金は相続財産ではないから、遺留分計算にあたっての生前贈与や遺贈に該当しないという理屈ですね。
しかし、実質的に考えて、1000万円の贈与を受けたのと同じです。相続人間の不公平が到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益に準じて扱うとされ、生前贈与として扱われる場合の典型です。
なお、一時払い保険料約1000万円の贈与と見ることもできます。
念のため、まぎらわしいですが「保険料」と「保険金」は異なります。
「保険料」は、生命保険などの毎月支払ったり、一時払いしたりする金銭のことを言い、「保険金」は、保険事故が発生したとき、受取人が受領する金銭です。