遺言・相続問題
生前贈与と遺留分減殺
通常、遺留分減殺は、遺言や遺贈に対してなされます。
ただ、生前贈与についても遺留分減殺ができることもあります。
ただ、生前贈与についても遺留分減殺ができることもあります。
生前贈与に遺留分減殺をすることに気づかない弁護士もいます。
遺産相続や遺留分減殺事件は、案外、特定の弁護士に偏る傾向にあるようです。
遺産分割や遺留分減殺は、どの弁護士にでもできると思ったら大間違い、結構、弁護士の知識や能力により損得の差があります。
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始と減殺すべき生前贈与・遺贈(遺言による贈与)があったことを知ったとき(起算点)から1年間で時効により消滅します。
どのような場合に「知った」と言えるかですが、裁判例は、贈与や遺贈の事実を知っただけでは「知った」とはいえず、減殺できることを知ったときから1年と解されています。
ですから、死亡時に遺留分を侵害する遺言があったことを知らなかったときは、遺留分を侵害する遺言書の存在を知ってから1年、死亡時に遺留分を侵害する生前贈与があったことを知ってから1年ということになります。
とはいえ、普通は、遺留分減殺請求の内容証明郵便などは簡単にかけるわけですから、死亡後1年内に内容証明郵便を出しておけばすむものです。
死亡してから1年以内に内容証明郵便が到達していれば、時効などは争いようがありませんね。
なお、遺言や生前贈与が無効であると主張する場合はどうでしょう。
遺言の無効は比較的簡単です。遺言者に遺言能力がなかったとか、遺言書が偽造であるとか、遺言書に印鑑がないなどの不備があったものを死後に印鑑を押捺したという場合などです。
生前贈与の無効とは、どういう場合でしょうか。
被相続人の預金口座から、被相続人によるものとは思われない預貯金引出しが複数あったり、遺贈を受けたと称する相続人が、被相続人を連れて金融機関にいき、被相続人がいる前で預貯金を引出しているものの、被相続人は、何をしているか理解するだけの精神状態にない場合もあります。この場合、生前贈与は、理屈の上では無効となります。
被相続人の預金口座から、被相続人によるものとは思われない預貯金引出しが複数あったり、遺贈を受けたと称する相続人が、被相続人を連れて金融機関にいき、被相続人がいる前で預貯金を引出しているものの、被相続人は、何をしているか理解するだけの精神状態にない場合もあります。この場合、生前贈与は、理屈の上では無効となります。
遺留分減殺の主張はあくまで生前贈与や遺贈が有効であることが前提です。
だからといって、生前贈与や遺贈が無効であると信じていたから、生前贈与や遺贈が有効であると裁判で判断されて確定してから遺留分の減殺請求をしたのでは遅すぎます。
遺留分減殺請求権の時効は、遺留分権利者が相続の開始と減殺すべき生前贈与・遺贈が「あったことを知ったとき」から1年間であり、減殺すべき生前贈与・遺贈が「有効であることを知って」から1年ではありません。
ですから、生前贈与や遺贈が無効だと信じていても、念のため、万一、生前贈与や遺贈が有効だとすればという条件付きで、遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をしておきます。
このことも、結構、気がつかない弁護士さんがいます。
普通、弁護士は、予備的な主張をするということは、主位的な主張に自信がないと裁判所に判断されてしまうことになるので、よほどのことがない限り、最初のうちから予備的主張をしません。
しかし、裁判所も、予備的な遺留分減殺請求の意思表示について、ほぼ唯一の例外として、主位的な主張に自信がないとは判断しません。
なお、生前贈与された財産に対し、遺留分減殺請求をする場合の順序については、民法1013条「贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない」、民法1035条に「贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする」と定められています。
まず、遺言書による贈与、次に、後の生前贈与から順次前の生前贈与に対してすることになります。