遺言・相続問題
遺言書を書くにあたっての、いくつかのアドバイス
遺言書を書く人が増えています。
前コラムでもふれましたが、遺言書を書くなら「公正証書」をお勧めします。
まず、遺言書は厳格な様式で記載されなければなりません。
公正証書は、公証人(通常、司法試験に合格し、裁判官・検察官を歴任した法律家がなります)が作成しますから、「様式違反」で無効になることはありません。
次に、遺言書が、法定相続人など何ものかによって破棄・隠匿・改ざんなどがなされてはなりません。
公正証書は、公証人役場で遺言時から100年保管されます(未成年者でも、15歳から遺言ができます。最年少で遺言しても115歳まで生きてはいないでしょう)し、破棄・隠匿・改ざんの恐れはありません。
なお、住所地でなくても、どこの公証人役場でもできます。
また、法定相続人なら、被相続人の死亡後、公正証書遺言の有無を簡単に調べられます(被相続人であることを証明する戸籍謄本と身分証明書などが必要です)。ちなみに、法律相談で「父親がどんな公正証書遺言をしているか知りたい」と、父親の生存中に聞かれた方がおられましたが(実話です)、もちろん不可能です。
他に、遺言の注意です。
まず、遺言者が精神的に健常なうちに遺言書を作成する必要があります。
かつて、判例集に大きく取り上げられた事件で、病院で作成された公正証書遺言、それも、主治医立会い、遺言執行者が弁護士、証人2人が勤務弁護士、それが遺言する意志能力なしで無効と上告審までいって決着がついた事件があります。
また、一般の人は、よく誤解するのですが、夫婦で子供がいないときは、死亡した被相続人の兄弟姉妹に4分の1財産がいきます。
通常取りにはこないのが普通で、気持ちよく相続放棄をしてくれるか、自分の取分「0」での遺産分割協議に応じてもらえますが(取分「0」の遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明ももらえます)、中に強欲なきょうだい(の配偶者)がいることがあります。要注意です。
再婚したときには注意しましょう。
別れた配偶者には相続権はありませんが、何十年会ってなくても、子には相続権があります。
また、高齢で再婚した場合には、実子や前配偶者が、被害感情を持っている可能性があることがあります。
なんといっても、結婚直後に死亡しても、2分の1の法定相続分です。
なんといっても、結婚直後に死亡しても、2分の1の法定相続分です。
籍を入れずに内縁でいるのも「方法」です。生命保険の一部を内縁の妻を受取人にするという方法もあります。
事業を営んでいる人は注意してください。
個人事業でも、ワンマン会社でも、結構会社資産がある場合があります。
事業をつぐ子供には、事業+相続税分の預金などのみを相続させ、事業をつがない子供には、事業に関係のない、残りの全財産を分与するくらいの気でいましょう。
自分と同居している子には、間違いなく、住んでいる家が行くようにしましょう。
そのためには、家の時価を把握していることが必要です。
なお、財産の増減がある場合、定期的に、遺言を書き換えるのも1つの方法です。
遺言をしたことを、一番有利な遺言をした法定相続人か、自分が信頼できる年少者の親戚か、友人(先に死なれたら、やりなおしです)に遺言をしていることを告げておきましょう。
信託銀行がからんでいれば問題ありません。
ただ、信託銀行は、「もめる恐れのなさそうな」「争続になりえない」遺言内容(ほぼ、法定相続分どおりの相続分)の時に利用した方が賢明です。もめそうなときは、信頼できる弁護士に依頼し、弁護士を執行者とするのが無難です。
依頼した弁護士は、中立的立場になりますので、特定の相続人の代理人にはなれません。もちろん、調停などになれば、信頼できる弁護士を紹介してもらえるでしょう。