遺言・相続問題
金融資産だけなのにもめる遺産相続-被相続人の預貯金の不適切使用
相続財産が、金融資産だけというなら、一般的にいって楽ですね。
賃貸住宅に住んでいる被相続人なら、普通そうなります。
そんな相続がもめるはずもなく、弁護士のところにくるということは珍しいです。
そうかと思いきや、結構、あります。
親と同居している、あるいは親と別居しているが、1人の子が、親の預貯金を管理しているという場合です。親が、病院や施設に入っている場合もあります。
子の1人が、親と同居していたり、親の財産を管理している子が、親の財産について「まっとう」な管理をしているなら問題がありません。
同居している子は、親の判断能力が衰えますと、預貯金を勝手に出すことができたりしますし、親が介護施設や病院にはいると、通常は子の1人が預貯金の通帳・印鑑・カードなどを預かります。
被相続人が死亡するまでは、被相続人名義の預貯金を他の相続人は見ることができません。
被相続人が死亡すると、他の法定相続人は、金融機関に取引履歴を請求できます。
特に、弁護士に依頼して23条照会という手続きをとる必要もありません。
理由は、法定相続人は、被相続人の地位を包括承継するからです。被相続人は、自分名義の預金の取引履歴を請求できますから、法定相続人も、同様、被相続人の取引履歴を請求できます。
親と同居していたり、親の財産を管理している子が、引出した金額が異常に多いというときが問題となります。多いときには、毎日限度額の50万円が何回、十何回と引下ろされているということもあります。
親と同居していたり、親の財産を管理している子が、合理的な説明ができれば問題ありません。例えば、病院代や福祉施設の代金や保証金の領収証を保管していて金額が概ね会っていれば、弁護士に相談することもなく終わります。
弁護士に相談する事例は、合理的な説明を受けることができなかった事例です。
確かに、自宅では暮らしているものの弱った親や、病院に入院したり、介護施設に入っている親が使うお金と、かけはなれている例があります。
この場合、遺産分割の調停をして、妥協が成立すれば、それを加味した財産分与で終了します。
しかし、妥協が成立しない場合、調停手続きでは扱えません。
死亡した親の預貯金を、子の一人が横領した場合には、遺言書がないとすると、死亡した親が横領した子に対して不当利得返還請求権、あるいは、不法行為による損害賠償請求権を有したまま死亡したことになりますから、他の子(配偶者が生きている場合は配偶者も)は、相続分に応じた不当利得返還請求権、あるいは、不法行為による損害賠償請求権を有することになります。 死亡した親の配偶者が既に死亡していて、子が2人いる場合、子の1人が親の金1000万円を横領したとすると、他の子が横領した子に対し500万円の不当利得返還請求権、あるいは、不法行為による損害賠償請求権を有することになります。
都合が悪いことに、家庭裁判所の調停や審判では最終的な判断はできず、地方裁判所に訴訟を提起しなければなりません。
また、相続法改正により、 相続開始後(被相続人の死亡後)に、勝手に引き出された預貯金については、引き出したとされる相続人以外の相続人全員の同意があれば、相続時に存在したものとみなされることとされ、預貯金も遺産分割の対象とみなされ、当然に遺産分割調停の中で処理でき、地方裁判所に訴訟を提起する必要はなくなりました。もっとも、誰が引き出したかわからないという事案もあります。
逆に、世話をしている子が正当に出金した分まで、他の相続人が、横領したと言い張っているとしか考えられない事例もあります。
子が親のお金に手をつけたり、どうせわからないと思って親に関係のないお金を引き出したりする事例、あるいは、難癖をつける事例は珍しいと思われるかも知れません。
しかし、結構あります。
私は、攻める側・守る側あわせて1数件扱っています。
双方感情的になるため、和解が成立しにくいですね。