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遺言・相続問題

資産・負債がわからない場合

 亡くなった人の財産が多いのか負債が多いのかわからないことがあります。
 
 その昔は、長男が遺産をほとんど取得し、他のきょうだいはあまりもらえなかったという時代がありました。
 今でも、そんなふうに遺産分割がなされている場合もあるでしょう。
 
 別に生活に困ってないなら、特に、遺産をあてにすることもないかもしれません。
 ただ、最近は、きょうだいが遺産を要求するという場合が多いでしょう。
 きょうだいに配偶者がいればなおさらです。きょうだいどおしではなく、配偶者間の代理戦争となる場合があります。
 
 依頼者は、妥協案について賛成しているのに、依頼者が家に帰って、次の回になると、反対だといわれるのが、弁護士にとっては困るのです。
 
 たいてい、依頼者の配偶者が原因の場合が多いですが、だからといって、配偶者をつれていこうとすると拒否されたりします。
 「私が厚かましいと思われたくない」とかいって。現実に厚かましいのは「ご主人(奥さん)あなたです!」。

 逆に、相続放棄した方がよいと他の相続人から言われている、どうしたものかという相談があります。
  妻と子全員が相続放棄するのかと思いきや、相続放棄をしないきょうだいがいる、そのきょうだいから、面倒な債務の支払いは自分でやる、相続放棄をした方が面倒ではないといわれたという相談が結構あります。
  財産を聞くと、相続放棄をしないきょうだいだけが知っているということが多いです。
 
 普通は「相続放棄をすると損でしょうね」と回答します。
  マイナスなら相続放棄をしないきょうだいが、なぜ相続放棄をしないかということです。
  財産があるからという理由が多いです。
  いまだに、長男1人が相続すべきものと考えている人が多いですね。もちろん、それで納得しているなら、それでかまいません。
 
 それとは別に、本当に、財産が多いのか負債が多いのかわからない場合があります。
 3か月の熟慮期間は家庭裁判所に申請して延期手続きをとることができます。ただ、2回目の延長は難しいと考えておいてください。弁護士さんにも、簡単に何回でも延長できると錯覚している人がいます。
 期間を延長して調査すれば大丈夫ということはありません。
 
 よくあるのが、被相続人が連帯保証をしているのではないかという場合です。
 連帯保証は、主債務者が順調に支払っている限り、連帯保証人に連絡はいかないのですが、主債務者が支払わなくなったら、すぐに何百万、何千万という督促状が届くことがあります。
 親戚の連帯保証人なら調査も可能ですが、同業者や親しい友人の連帯保証は、家族でもわからないことがあります。
 遺産が多額であれば、多少負債があっても大丈夫でしょう。
 しかし、遺産より連帯債務を含めた負債が多かったというのでは話になりません。

 なお、税金のことを考えると、限定承認というのも現実的ではありません。限定承認は、税金を考えると損だからです。
 
 何かいい方法はないでしょうか。
  私がお勧めしているのは、財産をさほど持っていない法定相続人に相続させる方法です。
  大きな借金がでてきたら、運が悪かったとして、自己破産をすればよいのです。
 住宅は賃借、勤めは非正規社員の子が相続してもいいでしょう。単純承認して、とんでもない負債が出てきても、自己破産で借金は0になります。
  破産をしても、借金をチャラにするためには「免責」が必要ですが、たとえば、自分がギャンブルで借金をつくったというわけではなく、相続した負債ですから、免責にはなります。
  もっとも、プラスの財産を隠して破産申立をすると、詐欺破産として免責にならない場合があります。
  もちろん、借金が出てこなければ、破産の危険をおかした人の取分は、他の相続人よりはるかに多く裏で分配するという約束のうえでということになります。
  裏切られる危険があります。
 裏切られたら手も足も出ません。

 あるいは、住宅は賃借、高齢で年金暮らしという場合なら、調査してプラスかマイナスかわからなければ、単純承認をするというのもいいアイデアです。
 年金は差し押さえ禁止財産ですから、自己破産をする必要もないかも知れません。
 差押さえられるものなら、差押さえてみろと開き直るのです。
 なお、債権者がうるさいというなら、弁護士に委任をすればよいのです。弁護士は「払えません。以後の連絡は弁護士にお願いいたします。本人に連絡しないでください」という内容証明郵便をだしてもらうことになります。5万円~10万円程度です。
 借金は墓場まで持って行って、死亡後、遺族が相続放棄をすればよいのです。
 なお、この場合、老親ですから、たとえ裏切られたとしても、結局は、自分たちのものになります。
 相続人が全員相続放棄をして、国庫に入ってしまうというのはもったいないですね。

西野法律事務所
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