遺言・相続問題
遺留分減殺の調停や訴訟における争点
遺留分減殺請求の調停や訴訟における争点は、まず、有効に遺留分減殺請求訴訟が提起されたかどうかです。
そのようなケースは希です。
といいますのは、弁護士と相談すれば、何をおいても、遺留分減殺請求の内容証明を送付するようアドバイスされるからです。
なお、留守がちの家に内容証明郵便を送付すると、郵便配達人が配達に来たとき、留守であれば「不在票」をおいていきますが、不在票には「内容証明郵便」「差出人弁護士○○」と記載されていますから、わざと郵便局に再配達させたり、郵便局に取りにいったりせずに、留置期間満了で返送させようとする人がいます。
ですから、内容証明郵便とともに、配達記録郵便で、内容証明郵便と同一内容の郵便を出し、双方書面の本文に「本書面は、内容証明郵便と配達記録郵便にて各1通を郵送します」と書いておきます。
留守の場合、内容証明郵便は配達人が持ち帰りますが、特定記録郵便は投函されます。そして、特定記録郵便にも番号が付されていて、郵便局のホームページから「郵便追跡」ができるようになっていますから、到達したことが証明できます。
なお、民法改正で「1項 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。2項 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通到達すべきであった時に到達したものとみなす。」(97条)とされました。
ただ、念には念を入れるのが正しいやり方だと思います。
遺留分減殺請求の調停や訴訟における争点は、まず、生前贈与の有無および金額です。
不動産の生前贈与や遺言書による遺贈が結構あります。
被相続人が相続人に対し、不動産や不動産の代金を贈与した場合があります。
被相続人の土地上に相続人が建物を建築する際に借地権を設定した場合、借地権相当額の贈与があったと解されます。借地権を設定せず、建物を建築させ、無償で土地の使用をさせた場合にも、使用借地権相当額の贈与があったとされることが多いです。
不動産がある場合、遺留分減殺請求をされた相続人は、価額弁償としてできるだけ払いたくないですから、不動産の価格を低めに評価し、逆に、遺留分減殺請求をした相続人は、価額弁償としてできるだけもらいたいですから、不動産の価格を高めに評価するということで、不動産の時価が争いになります。
被相続人所有の建物に無償で住んでいた場合は、ケースバイケースです。逆に、親の面倒をみさせられてきたと考えることもできる場合があります。
現金、預貯金、株等の有価証券、高価な動産の贈与は生前贈与に該当します。特別受益の中で、不動産と並んで多いケースです。
民法1030条に「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする」と記載されています。
改正相続法によって、法定相続人に対する生前贈与が特別受益として「持ち戻し」計算の対象になるのは、相続開始前10年間にしたものに限定されることになりました(民法1040条)。
さらに生命保険金が争いになる場合がありますが、別のコラムで述べます。