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2015年~2017年バックナンバー

韓国徴用工の韓国政府に対する訴訟

平成27年5月19日、日本の統治時代、戦争に関与した企業に強制的に動員された朝鮮人軍人・軍属の遺族が「日韓請求権協定に基づき、無償で支援された3億ドル(362億円を遺族に返還せよ」と求める声明文を発表しました。

 遺族会は「朴正煕政権は日本との交渉の過程で補償金を受け取り、被害者たちに対し政府レベルで個別に支給するとしたが、実際には経済発展のための資金に使われた。これは今日、韓国の先進国入りに向けた大きな下支えとなった」と強調しています。

 その上で遺族会は「遺族が対日請求権をめぐって日本で賠償請求訴訟を起こしたが、棄却された。これは日韓請求権協定により(強制動員に対する補償は)韓国政府が責任を負うべきだとされたためだ」と説明しました。

 そして、「政府は現在、時効が成立したとの理由で、支援金の返還を拒否している。この金は政府ではなく遺族に所有権があるため、遺族に返還されてしかるべきだ」と述べています。


 遺族会は平成26年11月、この問題について訴訟を起こしています。
 審理を担当しているソウル中央裁判所は、平成27年6月16日に審理を終える予定です。

 本来は、まとめてではなく、個別の遺族が韓国を相手に訴訟すべき何でしょうね。


 なお、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」により、韓国人元戦時労働者・従軍慰安婦からの請求は解決済みとするのは、日本政府が、最高裁判所の判決に従っているということになります。


  「旧日本軍のいわゆる従軍慰安婦問題等に関する最高裁判所判決」

 韓国人元戦時労働者・従軍慰安婦からの請求事件が、裁判所に提起されていたことをご存知でしょうか。

 旧日本軍の従軍慰安婦問題に関し、日本政府を被告として20年前(平成3年)に提起された訴訟であり、原告は旧日本軍の慰安婦に関する謝罪と賠償を求めています。

 原告らは、東京地方裁判所にて敗訴、東京高等裁判所にて敗訴、最高裁判所の平成16年11月29日決定により、原告らの敗訴が確定しています。

なお「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」をご覧下さい。

 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定により、両国間における請求権は、完全かつ最終的に解決されているということになります。

 日本は、日韓基本協定締結にあたり、韓国政府に、無償で3億ドル、有償で2億ドルの借款を供与し(1ドル=360円の時代で、大卒初任給2万円の時代です)無償分だけで1兆0800億円を供与しています。
 借款の見返りとして、韓国人が日本や日本国民(法人含む)はできず、韓国政府が、韓国民に賠償するというスキームです。
 なお、日本は、あわせて、在韓日本資産(GHQ調査で52.55億ドル。現在の邦貨換算28兆円)の権利を放棄しています。


 なお、最高裁判所の判決文、要旨、参照条文を記載しておきます。

最高裁判所第二小法廷
平成15年(オ)第1895号
平成16年11月29日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
1 上告代理人高木健一ほかの上告理由第1の2のうち憲法29条3項に基づく補償請求に係る部分について
 (1) 軍人軍属関係の上告人らが被った損失は、第二次世界大戦及びその敗戦によって生じた戦争犠牲ないし戦争損害に属するものであって、これに対する補償は、憲法の全く予想しないところというべきであり、このような戦争犠牲ないし戦争損害に対しては、単に政策的見地からの配慮をするかどうかが考えられるにすぎないとするのが、当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和40年(オ)第417号同43年11月27日大法廷判決・民集22巻12号2808頁)。したがって、軍人軍属関係の上告人らの論旨は採用することができない(最高裁平成12年(行ツ)第106号同13年11月16日第二小法廷判決・裁判集民事203号479頁参照)。
 (2) いわゆる軍隊慰安婦関係の上告人らが被った損失は、憲法の施行前の行為によって生じたものであるから、憲法29条3項が適用されないことは明らかである。したがって、軍隊慰安婦関係の上告人らの論旨は、その前提を欠き、採用することができない。
2 同第1の2のうち憲法の平等原則に基づく補償請求に係る部分について
 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後、旧日本軍の軍人軍属又はその遺族であったが日本国との平和条約により日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人に対して何らかの措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項、恩給法9条1項3号の各規定を存置したことが憲法14条1項に違反するということができないことは、当裁判所の大法廷判決(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁等)の趣旨に徴して明らかである(最高裁平成10年(行ツ)第313号同13年4月5日第一小法廷判決・裁判集民事202号1頁、前掲平成13年11月16日第二小法廷判決、最高裁平成12年(行ツ)第191号同14年7月18日第一小法廷判決・裁判集民事206号833頁参照)。したがって、論旨は採用することができない。
3 同第1の2のうち、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律(昭和40年法律第144号)の憲法17条、29条2項、3項違反をいう部分について
 第二次世界大戦の敗戦に伴う国家間の財産処理といった事項は、本来憲法の予定しないところであり、そのための処理に関して損害が生じたとしても、その損害に対する補償は、戦争損害と同様に憲法の予想しないものというべきであるとするのが、当裁判所の判例の趣旨とするところである(前掲昭和43年11月27日大法廷判決)。したがって、上記法律が憲法の上記各条項に違反するということはできず、論旨は採用することができない(最高裁平成12年(オ)第1434号平成13年11月22日第一小法廷判決・裁判集民事203号613頁参照)。
4 その余の上告理由について
 その余の上告理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、民訴法312条1項又は2項に規定する事由に該当しない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 津野修 裁判官 北川弘治 裁判官 滝井繁男)
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