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雑記帳

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「良い円安・悪い円安」軍配はどちらに?

 円安のメリットとデメリットはどちらが大きいのでしょうか。
 もちろん、立場によって異なります。
 輸出産業は大もうけでしょうが、輸入産業には逆風でしょう。

 結論を出すことは難しいですね。
 効果が発現する時期に関して肯定派と否定派の議論がかみ合っていません。
 やってみないとわかりません。

 まずは効果が発生する時期はどうでしょう。

 短期スパンをみると、短期的な円安のマイナス面については、コストプッシュ型のインフレ高進(実質賃金の低下)による家計の負担増により、個人消費にネガティブな影響を与えるのはほぼ自明です。
 ややスパンを伸ばして考えると、個人消費の悪化という犠牲よりも、輸出の増加や企業の設備投資の増加という期待が高まってきます。
 徐々に輸出が増えて貿易収支が改善するという「Jカーブ効果」への期待も根強いといわれています。

 さらにスパンを伸ばして考えると(中期スパン)、円安で国内の投資コストが減少し、企業の国内回帰が進むことで設備投資が増え、円安の恩恵がじわじわと生じるという効果が期待できとするもので、肯定する意見もあれば、否定する意見もあります。

 長期スパンになってくると、円安によって輸出が押し上げられる場合、価格競争が重視されてしまって、企業が商品やサービスの付加価値を高める努力を怠るようになるという意見もあれば、円安によって価格競争で有利な環境を作ったうえで、研究開発の努力も怠らなければ、円安は決してデメリットにはならないという意見もあります。

 問題は、日本で生産拠点を作るコストが円安で小さくなっても本当に国内投資は増加するかどうかです。

 「国内投資の促進」には2つの視点があります。
 1つ目は外資系企業が日本に生産拠点を作るといった対内直接投資で、2つ目は、日本企業の国内回帰です。

 例えば、通貨安や物価安のメリットを対内投資の増加によって享受するのは、新興国でみられる典型的な成長パターンです。「安い日本」というテーマは日本の新興国化という面もはらんでいる。
 しかし、多くの新興国においてこのパターンがうまくいく背景には、人口動態が「若い」という要因があります。海外の技術を学んで生かす人が国内で増えていくことで、内需も活性化されます。

 そう考えると、「人口減少する新興国」と言えそうな日本では、対内投資のメリットはそれほど大きくないのかもしれません。それどころか、投資をしてもそれを支えてくれる人材がいないとなれば、そもそも投資を手控える動きにもつながるでしょう。

 海外資本の日本への投資ということも期待したいですが、日本企業の日本への投資(日本への回帰)に、より期待したいですね。

 いずれにせよ、「悪い円安」なのか「よい円安」なのかは、しばらく経過してみないとわからないのかもしれません。


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