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雑記帳

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「超過貯蓄」50兆円はどこへ行った

 令和2年に始まったコロナ禍で消費が抑制され、家計に積上がったお金「超過貯蓄」について、エコノミストらはその規模を50兆円程度と試算しています。

 令和2年1月に国内初の感染者が確認された新型コロナは、外出自粛を招き、外食や旅行・宿泊など対面型サービス業を中心に消費は一気に冷込みました。
 最初の緊急事態宣言が出された時期を含む令和2年4月~6月期の実質GDPは前期比年率で27.6%減。そのうち個人消費は28.7%と大幅に減少しました。

 その裏で、貯蓄は積上がり始めました。
 内閣府が発表している、家計が可処分所得などのうちどの程度を貯蓄に回しているかを表す家計貯蓄率(季節調整値)を見ると、平成27年~令和元年は、平均で、1四半期当たり1.2%で推移していましたが、令和2年4月~6月期には21.1%に急上昇し、その後も令和4年1月~3月期まで4~10%台の高い貯蓄率が続きました。

 日本銀行の資金循環統計を用い、令和2年以降の家計の現預金残高の推移を見ますと、平成27年~令和元年の増加傾向を大幅に上回った状態が続いていて、この差は、おおむね50兆円程度となっています。

 コロナ禍の間はこの膨大な貯蓄が「リベンジ消費」の原資となり、経済を活性化させるとの期待が強いと考えられてきました。
 令和5年5月にコロナの感染症法上の位置付けが「5類」に移行し、マスクの着用やイベント会場での収容人数制限、海外渡航時の水際対策などの制約が順次緩和され、社会の正常化が進んでからも、消費は盛り上がりを欠いています。
 実質GDPの内訳で見ると、個人消費は、令和5年4月~6月期と7月~9月期の2期連続で前期比マイナスとなりました。ゴールデンウイークや、新型コロナの5類移行後初の夏休みシーズンがあったのですが、期待外れの結果となりました。

 家計の消費性向はコロナ前近くまで戻ってきているものの、物価高の影響で「生活必需品の値段が上がり、仕方なく消費しているのであり、前向きなリベンジ消費が出ている状況ではないとも考えられます。
 物価高は積み上がった貯蓄の価値も目減りさせます。
 50兆円程度の超過貯蓄は、家計の現預金全体の5%程度に相当しますが、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は令和4年に前年比2.3%、令和5年に3.1%それぞれ増加し、令和4年と比べると5.4%の上昇となっています。
 物価高で超過貯蓄は実質的に消滅し、今後これを原資としたリベンジ消費は期待できないという見方もあります。

 日本人は、インフレに慣れておらず、また自分の賃金が上がるか懐疑的なため、将来に備えた生活防衛意識が強く、リベンジ消費など期待するべきではないという見方もあります。

 いずれにせよ、「超過貯蓄」50兆円が、旺盛な消費につながることはないことについては、まちがいがなさそうです。


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