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雑記帳

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中国経済低迷は「中所得国の罠」か

 中国は、21世紀に入り急成長を遂げ、「世界の工場」として米国に次ぐ経済大国に躍出ました。

 中国は、平成13年に世界貿易機関(WTO)加盟を果たしました。
 その前提として中国政府は国内市場を全面的に開放すると約束しました。
 それをきっかけに、多国籍企業を中心に世界に点在する工場とサプライチェーンが徐々に中国に集約されていきました。
 その過程で、中国企業は外国企業から経営ノウハウと先進技術を、「学び」あるいは「盗み」、中国は「世界の工場」になっていきました。

 中国の人口は多く、輸出製造業にとって際限なく供給される労働資源は安い製品・商品を大量に生産するうえで大いに役に立ちました。
 中国の廉価な労働資源はほとんど農村でした。
 中国政府は公式的に農民の都市部への移住を認めていませんいが、農民の出稼ぎを非公式に黙認しました。「非公式」とは、都市部で出稼ぎする農民に戸籍(住民票)を付与していないことを意味します。戸籍(住民票)がなければ、社会保障が与えられていないことになり、農民は「農民工」と呼ばれ、労災、健康保険、年金保険など一切受けられないことになります。
 結果的に企業は、その分のコストを削減することができました。
こうしたなかで中国経済は「離陸」しました。
 しかし、40年間にわたる「一人っ子政策」によって出生率が下がり、生産年齢人口はすでに減少し、総人口も減少してきています。
 中国経済を支えてきた比較優位の「人口ボーナス」が急速に減少しています。
 生産性の低い農業から生産性の高い鉱工業とサービス業への労働移動によって経済成長を押上げることができたのですが、出生率の低下と生産年齢人口の減少により、その力は急速に弱くなっています。
 また、グロバール・サプライチェーンが再編され、多国籍企業は、中国に集約させている工場の一部を他の新興国に移転させてきています。
 労働資源の供給が減少すれば、人件費が上昇し、付加価値の低い産業は人件費のより安い新興国へシフトします。

 また、今の中国の経済成長、とりわけ高付加価値の産業をけん引しているのは外国資本であるということです。
 中国が、平成13年にWTOに加盟した当時、中国政府は金融市場を含めて国内市場を全面的に開放すると約束しました。
 しかし、現状をみれば、中国の市場開放は明らかに不十分と言わざるを得ません。
 このことが米中貿易戦争を誘発した原因でした。
 米中貿易戦争によって問われているのは中国が既存のグローバルルールを順守するかどうかです。
 しかし、中国政府は既存のルールが先進国によって定められたもので「途上国にとって不公平なものが多い」と主張するなどして、中国は先進国と対立し、徐々に国際社会で孤立していっています。

 これまでの経済成長は経済の自由化によって実現したものですが、習近平政権になってから、国有企業をより大きくより強くしようとしています。
 国有企業が主役となる体制において経済成長を実現できるならば、改革・開放を推進する必要はなかったといえるでしょう。
 では、中国政府が経済に対する統制を強化しようとしている理由は、行き過ぎた経済の自由化が共産党一党支配の政治体制と対立するから統制を強化しようとしているとされるのが一般的な解釈です。

 中国経済は出生率の低下と生産年齢人口の減少により「中所得国の罠」にはまる可能性がある。サプライチェーンの中国離れは中国の産業構造高度化を妨げることになります。

 なお、「中所得国の罠」とは、多くの途上国が、経済発展により一人当たり国内総生産(GDP)が中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下したり、長期に低迷したりすることを指します。
 一人あたりのGDPが1万ドルの天井を超えるには、社会的な構造変革が必要で、民主主義でないと、超えられないとのことを指します。

 ちなみに、現実に、一人あたりのGDPが2万ドルを超えている国は、民主主義国か、あるいは、産油国であるサウジアラビア、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦、カタールのみです。
 これらの国は、石油のおかげで一人あたりのGDPが2万ドルを超えているという、例外中の例外です。


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