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雑記帳

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植田日銀総裁 金利全般1%上昇なら保有国債「評価損40兆円」植田日銀総裁

 令和2月22日、日銀の植田総裁は衆院予算委員会で、金利全般が1%上昇すれば日銀保有国債の評価損が40兆円に達するとの見通しを示しました。

 日銀の令和5年度上半期決算によると、保有国債の評価損は令和5年9月末時点で10兆5000億円、53.86%を保有しています。
 厳格に運用してきた長期金利の指し値水準を見直したことで含み損が増え、植田総裁は「金利全般が1%上昇したという場合に、保有国債の評価損は約40兆円程度発生する」と答弁しました。

 衆院予算委員会では、今後の金融政策運営を巡り「政策を決める際には、足元の物価上昇率というよりは短期的な物価上昇の変動要因を除き、1年半とか2年間くらい続くような基調的な物価上昇率を見て判断する」との姿勢も改めて示しました。
 植田総裁は「この基調的な部分、何パーセントというのはなかなか難しいが、これは徐々に高まりつつある。高まっているというふうに判断している」と答弁し、「それに合わせて適切に金融政策を運営していきたいと考えている」と語りました。
 物価動向に関しては「これまでの輸入物価上昇を起点とする価格転嫁への影響は徐々に和らぎつつある」との認識を示し、賃上げの動きが続けば「雇用・賃金が増加する中で物価も緩やかに上昇する好循環が強まっていく」と述べました。
 先行きの消費者物価を巡り「去年までと同じような右上がりの動きが続くと一応、予想している。そういう意味ではデフレではなくインフレの状態にある」との認識も示しました。

 債券の含み損は、満期まで持てば顕在化することがありません。
 満期が到来すれば、額面で償還されます。
 満期までに、債権を売却せざるを得ない場合に限って、損失が顕在化します。

 破綻したアメリカのシリコン・バレー銀行の例をとってみましょう。
 シリコン・バレー銀行は預金の大半を国債や住宅ローン担保証券(RMBS)などの債券投資に充てていました。
 これらの債券は、債務不履行(デフォルト)に陥るリスクが極めて低い安全資産とされますが、金利の上昇によって価格が下がるリスクがあります。
 とくに満期までの期間が長い債券はそのリスクが大きいといえます(ちなみにRMBSは通常、満期までの期間が長く、さらに金利上昇時には普通の債券よりも価格が下がりやすくなるという性質をもっています)。

 令和4年以降、FRB(連邦準備制度理事会)による急激な利上げが始まると、これらの債券の価格は大きく下がり、SVBは大きな含み損を抱えるようになりました。
 債券の含み損というのは、売らなければ損は表面化しません。
 債券の価格は大きく下がったからといって、アメリカの他の銀行は破綻していません。

 問題は、シリコン・バレー銀行は、24時間にも満たない時間に被保険預金者が一斉に想定外の預金引出しを行ったため、多額の現金の必要が必要になりました。
 そのため、含み損が生じていた、国債や住宅ローン担保証券(RMBS)などの債券を売却して現金をつくらざるを得なくなりました。
 そうして、巨額の損失が現実に発生し、資金繰難によって信用不安が高まりました。
 また、運の悪いことに、シリコン・バレー銀行の預金者は、IT産業やIT産業に勤務している従業員が預金者の多くを占めていたため、巨額の損失が現実に発生し、資金繰難によって信用不安が、瞬く間に広がってしまいました。
 そのため、破綻しました。

 日本の銀行は、金融庁が、銀行の経営陣が効果的に金利リスクと流動性リスクを効果的に管理しているかどうか、ストレステストを行っています。
 日本の銀行は、日本国債の利率が上がり、国債の価格に含み損が出ても、シリコン・バレー銀行のように簡単には破綻しない仕組みになっています。
 ただ、完全であるかどうかは疑問ではあります。

 日本銀行は、預金者からの大量の引出し(金融機関からの引出しはありますが、秩序だったものです)がありません。
 お札(日本銀行券)の発行権があります。
 ですから、保有国債は、100%、満期まで保有し続けることが可能です。
 国債の含み益がいくらあろうが問題ありません。
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