雑記帳
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円安はどこまで続くのか キャッシュフローと個人のドル買い
現在のドル円レートは、1ドル150円程度で推移しています。
円安が続いている原因はなんでしょうか。
「金利平価説」が有力です。
金利平価説とは、どの通貨で資産を運用・保有しても、収益率が同じになるように為替レートが決定されるというものです。
今回の円安は、日米間の金利差の影響(日銀とFRBの金融政策のスタンスの違い)が大きいと説明します。
つまり、日本の金利がアメリカよりも低いので、より収益率の高いアメリカに資金が流れ、それが円安を引き起こしているという説明です。
これも、1要因であることは間違いないでしょう。
ただ、それだけには限りません。
「経常収支」の構造的な変化も一因です。
経常収支は、海外とのモノやサービスなどの取引で生じた収支のことです。
一般的に、経常黒字は円への需要をもたらし、円高を招く傾向にあるとされてきました。
しかし、令和4年度の経常収支は9.4兆円の黒字であるにもかかわらず、現実には円安が継続しています。
キャッシュフローで見てみましょう。
経常収支のうち、大きな比重を占めているのは「貿易収支」と「第一次所得収支」(対外金融債権・債務から生じる利子や配当金等の収支)です。
現在の経常黒字は、貿易収支の赤字を、第一次所得収支の黒字が補っているかたちだ。
重要なのは、第一次所得収支は、「直接投資収益」「証券投資収益」「その他」に分かれます。
直接投資収益のうち、「再投資収益」が約48%(令和4年度)を占めることです。
海外で現地生産している企業では、ドルで稼いだ収益の多くを、日本に戻さない=円に交換しない可能性がきわめて高いといえます。
また、「証券投資収益」の約90%(令和4年度)を占める「債券利子」も同じように、円に交換されない傾向にあります。
このような、実際の円の流れ=キャッシュフローを基準に、あらためて経常収支をみてみます。
海外で現地生産している企業では、ドルで稼いだ収益のうち、日本円になって還元されるものは少なく、多くはドルで再投資されます。
また、ドルで支払われる「債券利子」も、日本円になって還元されるものは少なく、多くはドルで再投資されます。
経常収支は黒字ですが、実際のキャッシュフローを反映した指標は、赤字に陥っていることになります。
貿易赤字だけでなく、対外直接投資における企業側の再投資戦略などを通じても、円の流出(円売り・ドル買い)が発生しています。
つまり、現在の円安圧力は、「日米間の金利差+貿易取引や投資などでのドル超過需要」とみることもできます。
単純に金利をあげても、円安は止まりそうにありません。